By Julia Mason, Nereus Fellow at Stanford University
8月、私の大好きな活動をして数週間を過ごした。美しい場所で、友人のフィールドアシスタントをしたのだ。私の研究のフィールドワークは、漁師にインタビューをすることである。これはこれで楽しく興味深いのだが、生態学者として海に飛び込むことは格別である。
友人のMolly Wilsonは、カリフォルニア大学サンタバーバラ校で博士過程に在学しており、アオブダイが盛んに漁が行われる地域でどのような行動をするのか、そしてそれがサンゴ礁の生態系にどのように影響するのかを研究している。アオブダイは大食な草食魚で、サンゴに繁殖する藻類を刈り取り、サンゴ礁の生態系において重要な役割を果たしている。しかし、これまでのアオブダイの放牧の研究は、漁場以外の地域で行われているものばかりなのだ。
Mollyは、何世代もの間、網や水中銃でアオブダイを漁獲してきたアンティグア・バーブーダで研究をしている。漁によってアオブダイの資源数が減っているだけでなく、アオブダイを怖がらせ藻を食べる時間を減らしてしまっているおそれがある。そのため、サンゴの健全性への影響は、これまで受け入れられてきた他のモデルとは同じとはいかないだろう。
私には、暖かく澄み切ったカリブ海でダイビングするのには、二つの目的があった。一つは、生態系の状態を分類することであり、もう一つは、異なる漁獲強度の場所で、アオブダイの習性を観察することだった。
生態系調査のダイビングでは、私は底生基板(サンゴ礁)を担当した。10メートルのリード線に沿って下降し、10㎝ごとにそこに何があるのかを記録した。豊かなサンゴ礁の中で、多肉質の大型藻類やざらざらした芝生状藻類、またはスポンジのような他の無脊椎動物などで覆われた、生きたサンゴ礁が見られるだろうと思っていた。しかし、その予想に反して、私のデータシートは芝生状藻類や大型藻類で埋め尽くされ、サンゴ礁の記録はほんの少しにとどまった。Mollyは、サンゴ礁に生息する魚の多様性、個体数、大きさに分類したのだが、その結果も同様に思わしくなかった。魚は多くいたのだが、稚魚がほとんどで、捕食者がいなくなったという兆候が顕著だった。大きなグルーパー、タイ、サメは繁栄している食物網の特徴となる大きなグルーパー、タイやサメはほとんど見ることはなかった。
アオブダイの習性を研究するために、“focal follows:” と呼ばれる方法を用いた。一匹のアオブダイを選び、2分間追跡し(十分な距離を保ちながら)、泳ぐのに費やした時間と食べている時間を記録し、藻類を何口食べたかを数え、記録した。アオブダイは2分間で幅広く泳ぎ回ることがわかった。底生ダイビングはゆったりしているのだが、アオブダイのそれは慌ただしかった。アオブダイが珊瑚の下に潜ったり、似たような魚の群れをスイスイと通り抜ける中、夢中になってアオブダイが藻をつっつく数を数えた。魚は目に見えて用心深く、ほとんどの間珊瑚棚の下で縮こまっていた。2015年にスピアフィッシングが禁止されたバーブーダ島でも、魚は姿を隠しており、ただ藻類からサンゴ礁を綺麗に守ってくれるのんきな”歯”とはなっていない。
もちろんアオブダイ漁だけが、私たちが見た海の状態を引き起こしたわけではない。カリブ海のサンゴ礁は、過去数十年に渡り、開発、ウニの病気、栄養流出、海の温暖化に悩まされている。私たちが調査したバーブーダ島のサンゴ礁は、1980年代の巨大なハリケーンにより壊滅したトゲスギミドリイシサンゴの跡であり、今では藻で完全に覆われている。これらのストレス要因が重なることで、それがサンゴ礁にどのような影響を与えるのか、改善するためにどのような政策が役立つかについて理解することがより重要になっている。
ダイビング、データ入力を14回繰り返し、数えきれない程の熟したマンゴーを堪能した後、私は霧のモントレー沿岸、そしてRコードに向き合う環境に戻ってきた。その2週間後、ハリケーンイルマがカリブ海を突き抜け、アンティグア島を水浸しにし、低地にあるバーブーダ島のあらゆるインフラを破壊した。アンティグアに住む友人の幼い子供が命を落としたこと、イルマがカリブ海中に残したその爪痕に胸が張り裂ける思いだった。コミュニティが復興し、人々の関心が陸上の立て直しに向く一方で、私はこのハリケーンがサンゴ礁に与えた影響も追っていきたい。過去の大規模ハリケーンからの復興に30年以上の時を要した。また、気候変動に伴い嵐の威力が増しているのも確認されている。嵐の影響をやわらげる強いサンゴ礁がなければ、このような大災害が頻発してしまうのではないかと危惧している。バーブーダ島の人々の回復力とコミュニティーが持つ強さについて耳にし、勇気づけられた。復興をお祈りします。
JULIA MASON, BA, ENVIRONMENTAL SCIENCE AND PUBLIC POLICY
Stanford University
Julia Mason は、スタンフォード大学 Hopkins Marine Station の博士課程に在籍中。気候変動の効果およびカリフォルニアやペルーにおける漁業の社会生態学的回復に関する管理について研究している。気候変動の中で、高度回遊性魚類や漁業生計を保護する動的管理アプローチに関心を持つ。