Written by School of Marine and Environmental Affairs student Samantha Farquhar,

海洋保全の分野では、生物多様性の保全に関する効果的な地域型の保全措置やOECMの有効性をめぐり新たな議論が行われている。まず、OECMとは何か。

2010年、生物多様性条約(CBD)締約国に関する条約が、20の生物多様性目標を含むように生物多様性戦略計画を改訂した、いわゆる愛知目標である。愛知目標11では、「効果的かつ公平に管理され、生態学的に代表的な良く連結された保護地域システムやその他の効果的な地域型の保全措置」を通じて、生態学的に沿岸や海域の10%の世界的な保全を求めた。2015年の後半に、この目標は持続可能な開発目標(SDG)14.5として採択された。

「その他の効果的な地域型保全措置」として分類されるだろうものの定義について合意がなかったと考えると、保全域が目標達成に向けて貢献したと受け入れらた唯一の措置であった。2010年から海洋保護域(MPA)の適用範囲は、海洋の2.5%から6.5%におよぶ1400万km²を超えて増加している(UNEP-WCMC 2018)。

しかし、新しい保全域の急速な拡大に伴い、その有効性を問う批判も増した。多くのMPAは、生産性または人的圧力の少ない海域に配置されていると考えられたり、本当の効果的な保全措置よりも政治的チェックボックスである(“paper parks(単に図面上にだけ存在する)”と呼ばれる)、または単純に厳密でないと批判された。CostelloとBallantine (2015)は、MPAの94%が漁業を許可していると報告した。その結果、保全域についての世界データベース(愛知11及び目標14.5のための公式追跡ツール)は、海洋の7.44%が保全されていると報告する一方で、多くは同意していない。Sala(2018) は、海洋および沿岸域のほんの3.6%のみが実際に保全されているだけだと主張している。

一方、国際レベルでは、これらの目標達成に向けた圧力が強まったことから、当初の「愛知11」の記述や「その他の効果的な地域型保全措置」に再度焦点が当てられるようになったが、前と同じように問題があった。OECMを定義または分類するための国際基準が存在しなかったのだ。話し合われたガイドラインがあり、世界的に同意された定義が必要とされた。

この交渉は、2018年にカナダからの資金提供をもとに、CBDにより始められた。この問題に懸命に取り組んできた保全団体は、OECMは保全地域(Table 1)のIUCN定義が目的と密接に合致する地域でなければならないと主張した。この地域における主な目的は、長期的な生物多様性保全である。反対に、主要な目的が保全ではなく、結果として生物多様性が保全されている地域も、OECMとして見なされ、世界的な保全目標にカウン

トされるだろうと主張する人々もいた。そのような地域は、潜在的に漁業の閉鎖、ツーリストパーク、国家制限区域、戦争墓地、海洋石油パイプライン、または再生可能エネルギー分野などの多様性がある。しかし、保全主義者は、保全が主要目的として管理されていなければ、効果的な地域がどのようになりうるかについて懐疑的であるとする。MPAも同様に、保全団体の多くの人は、OECMは厳密であるべきだと考えていた。

OECMに対するIUCN特別対策委員会は、CBD事務局主催の専門家ワークショップで議論をもたらした。そこでは、OECMを特定するための基準案を作成することとなった。この基準案およびガイドラインは、2018年7月にカナダのモントリオールで開かれた第22回CBD生物多様性条約の科学技術助言補助機関 (SBSTTA)会議で発表された。この会議で基準案が承認され、最小限の変更が加わり、最終評価のためにCBDの締約国会議に送られた。

「その他の効果的な地域型保全措置」は、保全区域以外の地理的に定義された区域」を意味する。それは、適切で、文化的、精神的、社会経済的、およびその他の地域的に関連する価値のある関連する生態系の機能とサービスとともに、本来の場所での生物多様性の保全のために、明確で持続可能な長期的成果を達成する方法で統治され、管理されている。

その上、OECM識別のための4つの基準もガイドラインと一緒に合意された。1.その地域は、現在保全域として認識されていなければならない  2.その地域は統治され、管理されなければならない 3.その地域は維持されなければならず、生物多様性の本来の場所の保全に効果的な貢献が達成されなければならない 4.生態系の機能とサービス、文化的、精神的、社会経済的、その他の地域的に関連する価値が支援されなければならない。

草案定義、基準、ガイドラインは2018年11月にエジプトのシャルムエルシェイクで開催される第14回COP会議 (COP14) でCBD締結国により採択が考慮される。一度採択されれば、愛知目標11に対する公約として公式に認識されるOECMのための国際基準となるだろう。また、締約国は、地域を特定し、現在の2020年の保全目標に向かってそれらを含めた場合、迅速に行動しなければならないだろう。

最後に、OECMである新しい標準は、持続可能な利用分野と生物多様性のための貴重な機会を提供する。それらは、本来の目的である生物多様性の保全に貢献するために、すべての分野で多くの努力をすべきであり、生態学的表現や接続性を高めたりする可能性があり、MPAによってもたらされる利益へとつながるだろう。IUCNが地域型保全のためにさらに大きな世界的目標を設定していることを考えると(2030年までに30%)、OECM は、現在および将来の生物多様性保全目標において大きな役割を果たす可能性を秘めている。

 

Table 1. Existing definitions of protected areas. *Note: The IUCN Definition and the CBD Definition are synonymous (Lopukhine and Dias, 2012)

References

Costello, M. J., & Ballantine, B. (2015). Biodiversity conservation should focus on no-take Marine Reserves: 94% of Marine Protected Areas allow fishing. Trends in Ecology and Evolution. Elsevier Current Trends. https://doi.org/10.1016/j.tree.2015.06.011

Lopoukhine, N., & Dias, B. F. de S. (2012). Editorial: What does target 11 really mean? PARKS, 18(1).

Sala, E., Lubchenco, J., Grorud-Colvert, K., Novelli, C., Roberts, C., & Sumaila, U. R. (2018). Assessing real progress towards effective ocean protection. Marine Policy, 91, 11–13. https://doi.org/10.1016/J.MARPOL.2018.02.004

UNEP-WCMC,(2018). Protected Planet: The World Database on Protected Areas (WDPA)

[On-line], October, 2018, Cambridge, UK: UNEP-WCMC and IUCN Available at: www.protectedplanet.net