Written by SMEA master’s student Sallie Lau,
夏の終わりのある土曜日。学生のいないプリンストン大学のキャンパスは、静寂に包まれ、秋の気配を感じつつあった。キャンパスの南側にあるFrick Chemistry Labだけは違った。Chemistry Labのロビーは、挨拶を交わす旧友たちの声が溢れ、紙コップに注がれたコーヒーの香りが漂う中に、初めて参加する研究者会議の空気が張りつめていた。
Chemistry Labの講堂の中では、視聴覚機器の最終テストが行われていた。前のスクリーンに、社会生態学的モデルとクラゲの繁殖に関するスライドが映し出された後に、「NIPPON FOUNDATION NEREUS OCEAN SCIENCE CONFERENCE」の文字が画面中央に整然と並んだ。
2年おきに開かれるネレウスプログラムの第4回会議であり、最後の会議でもあった。ロビーの外に集まった人々は、ネレウスプログラムが過去8年間で構築したフェロー、研究責任者、マネージャー、諮問委員、同窓生、名誉研究員の学際的ネットワークの一員である。これらの人々が講堂に入ると、静けさが増した気がした。ライトで明るく照らされていたステージが暗転すると、はじめに日本財団常務理事、海野光行氏が会議と学問の重要性について話した。そしてDr. William Cheung(ネレウスディレクター・科学)が続いた。
Williamの会議参加者へのオープニングスピーチでは、ネレウスの目的は、さまざまな社会、文化、生計手段に対して海洋が為す意味を考慮しながら、人間が海洋に与える影響を調査、検討すること、また海洋の変化を予測して政策を広く知らせることであると確認した。William は、私たちは海洋ガバナンスの岐路にあると話す。business-as-usual (現状のまま)の姿勢と行動では、生物多様性、経済的利益、また水産物の安全性の低下を引き起こす。そして、これは人々に安全な水産物を十分に提供し、気候変動の社会経済的不平等を大きな課題として捉える必要性を促す。
状況としては、行き詰まっている
「しかしながら、私たちのプログラムでは悲しい話だけを明らかにするのではなく、このようなマイナスの影響に対処する進路を生み出している。」と Williamは語る。
ネレウスプログラムが発足して以来8年間の活動は、Williamが述べた通りに進んできた。研究とコラボレーションを通じて、Williamと太田義孝(ネレウスディレクター・政策)は、社会科学者と自然科学者のネットワークを強固にし、一般の人々や関係者と共有するために海洋ベースの解決策のポートフォリオをまとめている。これは今年8月に書籍「未来を予測する:地球環境変化の下での海洋および人間システムの持続可能性(Predicting Future Ocean: Sustainability of Ocean and Human Systems Amidst Global Environmental Change)」として出版された。
この会議では、この本の各章の著者らが、2日間に渡り各々の研究結果を発表した。プレゼンテーションは、5分間で、セッションとテーマで構成された。このテーマを詳細に説明し、各セッションの最後のパネルディスカッションでさらなる議論がなされた。
パネルディスカッションでは、広い範囲でより深く議論された。参加者たちは、エコロジカルモデリングの課題を取り上げ、次に成長するブルーエコノミーの新自由主義モデルを問題にした。
未来の海の予測に関連する他の課題、またトピックも取り上げられた。 Juan José Alava(ネレウスリサーチアソシエイト/海洋生態毒性学)は、プラスチック汚染に対処するための政治的意志の強化について話した。Tiff Annie Kenny(ネレウスフェロー/オタワ大学)は、食料安全保障を可能にする場所、帰属、文化の役割について発表した。Sue von der Porten(ウォータルー大学博士課程)は、海洋ベースの解決策を考案する際に背景を考慮することの重要性を提起した。
「世界中の先住民の人々が周囲の土地を形作り、土地が彼らを育んできた。彼らは千年にも渡ってその土地で生きてきたのだ。背景がすべてである。その背景は自分たちの土地ということだ。」とSueは話す。彼女は、どんな政策がすべての背景に対処するのではなく、先住民と沿岸地域社会を支援できる政策を考えるべきだということを重視している。どうすれば先住民の人々の生活を再活性化し、彼らが自分の土地で意思決定するのを支援できるのだろうか。
テーマの一つ、課題と解決策は、人と人、人と海の関係を築くことが重要だ。公海ガバナンスに関する議論では、 Katy Seto(ネレウスフェロー)が、国の管轄権を超えた地域でのガバナンスを改善するための主な障害の1つは、その場所にあまり人が住んでいないため、人の居住地とみなされないことである、と述べる。実際には人間活動がある場所であり、地政学に取り巻かれている場所である。 Katyは、優れたガバナンスは、私たち人間と海洋空間をつなぐ経済的、政治的システムを考慮することから始まると考える。
会議では、ネレウス研究員とフェローらは、有益なことをもっと提供したい、また共有すべきであるため、学際的コラボレーション、企業やNGOとの分野横断的 な「コネクション」に関して振り返った。ネレウスは、若手研究者に発言権を与え、包括的な視点を提供し、多様な意見を大胆に示すことを大事にしている。
その上、ネレウスの研究員は、まだまだ可能性があり、さらにたくさんの人々を呼び込むことが出来ると考えている。彼らはすでにパネルでこれを実現する方法を考えており、伝統的な知識を倫理的に取り込む方法、これらの知識を生み出す人々を尊重する方法、これらの人々の声をプログラム外で広めて対話を作り出す方法について活発に議論している。
これは、ネレウスが科学を超えて、単に未来の海洋を予測するだけではないことの現れである。ネレウス研究者とフェローらは、公平性が海洋と人々の未来にとって重要であることを認識しており、これらの解決策が持続可能なだけでなく、社会的に公正な海洋の未来を促進するように、海洋ソリューションのポートフォリオを構築し、改善していく。
この会議では、こういった意見交換の場を作る機会がすでに考えられていた。これらのプレゼンテーションやパネルディスカッションは、後にYouTubeで公開することを目的に撮影されており、必要な人誰もがアクセスできる。「書籍を作っても情報が本当に必要な人に届くとは限らない。本は安くはないし、本を読み重要なメッセージを理解するのには時間がかかる。私自身、いろんな人の講義を聴くのが好きだったこともあり、明確なポイントを示して各章を説明するビデオがあると役立つのではないかと思った。」と太田義孝は話す。
2020年、ネレウスプログラムは終了する。グローバルをローカルに、科学を政策に繋げるだけでなく、コミュニティへの解決策も繋げるプログラムが開始される。それは、ネレウスが作り上げようとした横のつながりとネットワークから始まり、その上に構築されていく。最後に太田義孝は、ネレウスメンバーに問いかけた。「Are you with me?」
それに賛同する大きな歓声が、この講堂から世界中へと鳴り響いた。
Nereus海洋科學會議2019:進一步建立聯繫, 進一步進展海洋科學和政策
秋天來臨之前的一個星期六,普林斯頓大學的校園一片寧靜,瀰漫著秋天的氣息,除校園南側的Frick化學實驗室大樓外,校園內的其他建築物也沒有學生的踪影。化學實驗室大樓的大堂裡充斥著老朋友們互相問候的聲音、咖啡的香氣及新研究人員第一次會面時的興奮氣氛。
在化學實驗室大樓的一個演講廳內,工作人員正在測試視聽設備, 演講廳前的投影屏幕上閃爍略過有關社會生態模型和水母繁盛幻燈片,然後停留在一張中間印有“日本財團NEREUS海洋科學會議”字樣的幻燈片上。
Nereus項目每兩年便會舉行一次會議。今次是這計劃的第四次會議,也是最後的一次。聚集在大堂裡的研究員是Nereus項目在過去八年中建立的跨學科網絡的一部分。研究員逐漸進入演講廳。舞台上的燈光變暗,聚焦於計劃的科學總監張偉龍博士。
張偉龍博士在開幕詞中重申Nereus的宗旨:考察人類對海洋的影響、預測這些影響將如何改變海洋、並以使用這些預測為政策提供更好的信息,同時還要考慮到不同海洋社會,文化和生計可以怎樣應變。張博士說,我們現在正處於海洋管治的十字路口。我們現在需要為人們提供更充足和安全的海鮮,更謹慎地考慮氣候變化如何為帶來的社會帶來不平等。然而,我們對氣候變化採取集以慣常的態度,選擇不行動,導致生物多樣性消失,經濟利益和海鮮安全性降低。這與我們的需要非常矛盾。
事實上,我們陷入了困境。
“但是,”張博士說,“Nereus不是只會講述一些悲傷故事。我們亦會創建應對這些負面影響的途徑。”
自Nereus成立都現在已有八年了。在這八年,通過研究和合作,張博士和Nereus的政策總監太田義孝(Yoshitaka Ota)以及他們的跨學科網絡,將他們研發的一系列海洋解決方案與公眾和利益相關者共享。
這名為《預測未來海洋:全球環境變化中海洋和人類系統的可持續性》的書於今年八月出版。這場會議也是Nereus成員分享海洋解決方案的良好機會。這場會議也是Nereus成員分享海洋解決方案的良好機會。他們在普林斯頓大學這兩天通過演講及討論介紹他們的發現。
在這些演講及討論中,Nereus成員也提出了預測未來海洋的挑戰。海洋生態毒理學家,Nereus計劃的名譽研究人員Juan José Alava談到了加強對抗塑料污染的政治意願的挑戰。來自渥太華大學的Nereus研究員Tiff Annie Kenny向觀眾提及了地方歸屬感和文化在促進糧食安全中的作用。滑鐵盧大學(University of Waterloo)博士生Sue von der Porten提出了在提煉海洋的解決方案時考慮語境(context)的重要性。 Sue說:「世界各地的原住民在幾千年前就開始改變了他們周圍的土地。在這幾千年土地也塑造了他們。就這樣,語境就是一切。」她認為,我們應該問的是,哪些政策可以振興原住人民和沿海社區的生活方式並支持他們為在自己的土地上作做出土地運用的決定?
其中一項最受著重的主題(既是挑戰又是解決方案)之一是建立人與人之間以及人與海洋之間關係的重要性。 Nereus研究員Katy Seto在討論公海治理時提到,改善治國家管轄範圍以外海域理的主要障礙之一是:許多人不認為這些海域是人為空間,因為那裡沒有很多人。但是,從很多方面來說,公海都是一個人類活動頻繁的地方。Katy認為,善政國家管轄範圍以外海域始於考慮將我們與海洋聯繫起來的經濟和政治體系。
在會議上,Nereus的研究人員和研究員經常提及到“聯繫”這一主題:他們之間的跨學科合作,他們與私營公司和非政府機構的跨部門聯繫,海洋治理需要聯繫社會上更多聲音的事實。
Nereus的研究人員在討論中考慮到如何做到聯繫社會上更多聲音這一點,爭辯如何有道德地引入傳統知識,如何尊重知識生產者,以及如何在計劃之外擴大知識生產者的聲音,與學界以外的人進行有關海洋解決方案對話的。
這種對話已在會議上開始進行。Nereus錄製了會議上的演講和討論,將會把輯錄的演講在YouTube上發放,以便接觸公眾和利益相關者。太田義孝說 :「一本書很難接觸公眾和利益相關者。 書本並不便宜,而且閱讀和理解關鍵信息需要花費時間。我喜歡聽講座,並認為用視頻描述本章的論點會很棒。」
這表明Nereus超越了不再僅僅考慮到科學,不再僅僅預測未來海洋的結果。 Nereus的研究人員和研究員已經意識到,社會正義及平等對於海洋和人類的未來至關重要,他們將在海洋解決方案組合的基礎上加以完善,以使這些解決方案不僅促進海洋未來可持續性的發展,促進社會上的正義及平等。
Nereus計劃將於2020年結束,但是Nexus,一個不僅將科學與政策聯繫起來為社區提供解決方案的項目,即將開始。