Written by Katherine Came, UBC Institute for the Oceans and Fisheries,
ブリティッシュコロンビア大学の新しい研究によると、パリ協定地球温暖化目標を達成することで、世界の年間漁獲量数百万トン、また漁業者、労働者の収入および世帯の水産物支出を年間数十億ドル守ることができるだろう。
Science Advancesで発表されたこの研究では、温暖化を1.5度に抑えるパリ協定と現在のbusiness as usual(現状のまま)のシナリオでの生態系及び経済的影響を比較している。研究者らは、パリ協定の達成により、開発途上国で最大の利益が得られると共に、75%の海洋国に利益をもたらすだろうと結論付けた。
「協定の目標達成により、世界の漁業者の収入は年間46億ドル、水産労働者の収入は37億ドル増加し、世帯の水産物消費の支出が54億ドル減少する。そして、最大の利益は、温暖化により最も危険にさらされ、食糧安全、収入、雇用のために最も魚に依存している、キリバス、モルディブ、インドネシアのような開発途上海洋国にもたらされる。」と、UBCの教授、筆頭著者のRashid Sumailaは話す。
この研究では、パリ協定のシナリオ下における、最高収益を生み出す魚種の総質量およびバイオマスは、世界的に6.5%、開発途上国の水域では平均8.4%増加し、先進国の水域では、わずか0.4%の減少となることもわかった。
「より大きな魚のバイオマスとより高い海洋生産性は、さらなる漁獲量の可能性を意味するため、ヨーロッパを除く全ての大陸では、パリ協定による恩恵を受けるだろう。それに反して、北ヨーロッパの国々などでは、地球温暖化の影響から、より冷たい海水を求めて魚が極に向かって移動するため、より多くの魚を得ることとなる。温暖化を制限すれば利益は減るが、多くの場合、損失は水産物の価格上昇によって緩衝される。」と共同著者のTravis Tai(UBC博士課程)は話す。
例えば、ロシアでは、3.5度の温度上昇と比較して、1.5度の温暖化目標下においてはスケトウダラのバイオマスが低下し、25%まで漁獲量が減少すると予想される。
「しかし、「価格効果」により、魚の値段が19%上昇すると予想されるので、ロシアの漁業者収入は全体でわずか2%の損失となるだろう。一方米国の場合、価格効果により漁業収益が8%減少すると予測されるが、漁獲見込みが21%増加するため相殺されるだろう。」と共同著者であるWilliam Cheung(UBC准教授/ネレウスディレクター・科学)は話す。
海洋漁業セクターは、世界中でおよそ2億6000万人のフルタイム、パートタイムの仕事を支えており、これらの多くは開発途上国におけるものである。水産物は、依然として多くの開発途上国にとって重要な輸出商品となっている。
「魚の安定供給は、これらの仕事、食糧主権、豊かな暮らしを支えるために不可欠である。未来における健全で平和な社会を支えるという、増大する課題に直面しながら、現存する気候変動の影響に適応し、パリ協定を実施することは、地球の海洋漁業の未来にとって非常に重要である。」とSumailaは語る。
上記記事のプレスリリース:UBC’s Institute for the Oceans and Fisheries、またはUBC News