Andrés Cisneros-Montemayor(ブリティッシュコロンビア大学/ネレウスフェロー)、William Cheung(ネレウスプログラムディレクター・科学)、Rashid Sumaila(オーシャンカナダディレクター/ネレウス名誉リサーチアソシエイト)による研究“Towards an integrated database on Canadian ocean resources: benefits, current states, and research gaps”がCanadian Journal of Fisheries and Aquatic Sciencesに掲載された。
OceanCanada Partnershipによるこの論文は、カナダの海洋調査をまとめたものである。カナダは他国よりも一般的に多くのデータを所有しているのだが、どのようなデータがあり、どこで、どのような形式で利用できるのか不明確であった。著者たちは、1000以上のデータセットを調査した。このメタデータ・データベースは、さらなる分析のために公的に利用できる統合データベースである。メタデータの分析により、歴史的に多くの海洋研究データが、漁業、特に重要となる単一種の漁業に関係することがわかった。著者たちは、北極域のデータがないことを特筆しているのだが、先住民グループが人類学的研究や科学研究などの知識ベースを持ち合わせていることを考えると、これは意識の問題が大きいのかもしれない。
要約:
海洋生態系サービスは人間におよぶ利益を後押しし、またカナダは増えつつあるデータセットを作成する大規模な研究ネットワークを保持している。私たちは、カナダの海洋生態系とそれに対応する研究の状況に新たな観点を投入するため、利用可能な情報をまとめ、繋げ、調和する、初の試みを発表した。平均して1979年〜2012年に渡って集められたメタデータ・データベースは、現在1094の個人調査、そして政府からのデータセット716、非政府系320、学術的ソース58を含んでおり、海洋種、自然を牽引するものや資源、人間活動、生態系サービス、ガバナンスについての研究で構成されている。研究では、全体的に見ると、経済的、社会的側面が、また北極域のデータが不足している一方で、単一種漁業の研究に関しては広く普及していることがわかる。とは言うものの、多種漁業や生態系ベースの研究数は、1960年以降増加している。私たちは、メタデータ記録から描かれた多分野におけるデータセットを使用している面に主眼を置き、カナダでの海洋保護区の設立について、また、ヘイルツク先住民族によるニシンの資源利用について、この2つの例示的なケーススタディを発表し論議した。知識のずれを特定できれば、包括的であり、アクセス可能で、多分野にまたがるデータセットを構築し、さらに生態系と社会経済的ニーズ両方に応えられる、新たな持続可能な政策のために必要となる分析が叶うはずである。