William Cheung (ネレウスプログラム/UBC) とThomas Frölicher (ネレウスプログラム/University of Bern) が共著し、海洋熱波が北東太平洋の魚資源生物地理学とバイオマスに与える影響を示した研究Nature Scientific Reportsに掲載された。この研究では、「ブロブ」として知られる北東太平洋に影響を与えた2013〜2015年の海洋熱波(MHW)、また2019年の終わりに始まり、2020年にアラスカ湾のタラ業を閉鎖に追い込んだ北太平洋の熱波に関する懸念の高まりについて説明する。近い将来、MHWが原因で漁業が閉鎖される可能性があるため、これらの温度異常の影響は、海洋生態系だけでなく、資源に依存するコミュニティやビジネスの社会経済システムにも影響を与える可能性がある。したがって、著者らは、これまであまり知られてこなかった魚資源の生物地理学とバイオマスに対するMHWの影響を調査する。彼らは、MHWが「バイオマスの減少と魚資源の生物地理学の変化…21世紀中の10年間平均の変化の影響よりも少なくとも4倍速く、規模が大きい」ことにより、魚資源への影響を悪化させたことを示し、そしてこの地域の最も重要な魚種への影響が2050年までに倍増することを予測している。以下、調査の詳細。

要旨

海洋熱波(MHW)は、すべての海盆で発生し、沿岸および海洋生態系に深刻な悪影響を及ぼす。特に2013–2015年、北東太平洋ではMHWの大きな社会問題を抱えていた。しかし、MHWが魚の資源にどのように影響を与えるかについての知識は限られている。ここでは、地球システムモデルの大規模なアンサンブルシミュレーションのアウトプットと魚の影響モデルを組み合わせて、北東太平洋の主要な魚資源がMHWにどう反応するかをシミュレーションする。MHWが、21世紀全体の10年間平均の変化の影響より少なくとも4倍速くより大規模に、魚資源の生物地理学におけるバイオマスの減少と変化を引き起こすことを示している。長期的な気候変動のみに焦点を当てた以前の評価に比べて、最も重要な漁業種への影響は、2050年までに2倍になると予測する。気候変動下でのMHWによる漁業とその管理のための追加の課題を強調する結果となった。

 

Reference

Cheung, W. W., & Frölicher, T. L. (2020). Marine heatwaves exacerbate climate change impacts for fisheries in the northeast Pacific. Scientific Reports, 10(1), 1-10. link.