Written by Nereus Fellow Julia Mason
サンディエゴから400マイル南、はっとするようなターコイズ色の海をカルドンサボテンとオコチョウが見下ろす場所で、この夏、20人の高校生がゴム長靴を履き、防水のデータシートを持ち込み、ジンベイザメに目を凝らして研究現場に向かう毎日を過ごした。これらのオーシャンリーダーたちは、サンディエゴの低所得者コミュニティであるCity Heightsを支えている科学教育非営利団体Ocean Discovery Instituteによって選ばれ、慎重に準備をしてきた。彼らは、10年以上、長期にわたる綿密な生態系研究プロジェクトのためにメキシコ、バハカリフォルニア半島のバイア・デ・ロス・アンヘレスに生徒たちを連れて行っている。低所得層、第一世代の学生の大学進学率における全国平均が10%未満であるのに対し、この学生たちの75%がカレッジを卒業し大学院へ進む。その大多数が科学を専攻し、そしてOcean Discoveryのスタッフの多くがOcean Leaderの同窓生である。この夏、私は「Scientist in Residence」として1ヶ月にわたるそのプログラムの最終週に参加した。
気温がおよそ38度の暑さのため、私は水上でTeam Bycatchに加わり、漁網でウミガメを捕獲してしまう偶発的事故を減らすための抑止装置をテストすることにした。長年にわたり、NOAA(海洋大気局)の科学者と地元の漁師たちが協力しており、学生たちは、ウミガメが網を避けやすくするためのLED照明と低周波の「ピンガー」の有効性を証明している。今年、私たちは「多感覚応用」アプローチとして装置の組み合わせをテストした。私が学生たちに合流した時には、彼らはすでに様々な種の魚、サメ、レイを専門的に回収、特定、測定し、対象外の種を湾に静かに解放する素晴らしいチームになっていた。彼らが集めているデータ(網に捕獲された海洋生物の種類とサイズ、捕獲された時期と場所)は、私が博士論文の研究で使っていたものと全く同じであると、私は彼らに説明した。唯一の違いは、彼らは常にショーン・メンデスを歌いながら調査を行っていたということだ。
「Scientist in Residence」としての私の任務は、実在の人間である科学者として学生たちと人間関係が築ける存在であることだった。ある時、あるグループの学生たちに1時間質問攻めにされた。例えば、「ジャンクフードでは何が好き?」(クッキー生地のアイス)、「夜眠れなくさせるものは?」(根本的な不公平がなくならないこと、温室効果ガスの蔓延、あなたたちが受け継ぐ生物多様性の枯渇した世界)
学生たちと過ごす中で、このような時間を多く過ごした。少しふざけあったりもする一方で、研究を自分のものとし、海との繋がりを築く学生たちの姿に喜びを感じた。しかし、今は、低所得コミュニティをサポートするプログラムが削減され、海洋生態系を保護する政策が崩壊していることを考えると、このようなコミュニティを重視した科学教育は急務であると感じた。私は時々、脅かされているすべてのもの、世界中の不公平なものに直面して、海洋保護生物学が擁護できるのか、何に守る価値があるのかと考える。しかし、ジンベイザメと泳いだ後の学生たちのわくわくした感覚、本物の愛情、一緒に活動した漁師達への尊敬の念が見て取れ、私がなぜ、そして何をやっているのか、を明確に思い起こした。
バハでの研究を終え、彼らのバイア・デ・ロス・アンヘレスコミュニティへの最終プレゼンテーションを見て、非常に誇らしかった。多くの漁師とその家族たちが参加し、学生たちと私たちの研究を応援してくれた。私たちは夏のプロジェクトのまとめを見ただけではない。この若い世代がコミュニティや科学への投資であることを目の当たりにした。私は科学者として、多くのアウトリーチの機会を探し求め、科学や保全の多様な考え方をどのように理解し関わるのが最善なのか長い間考えてきた。私は、全体論的なアプローチにより、地元のコミュニティと関わり還元することを重視している今回のお手本を見習いたいと思う。
容赦なく太陽が焼きつける地を横切りながらメキシコからサンディエゴへの12時間ドライブ。家族との再会を待ちきれないホームシックのティーンエイジャーを連れてアメリカへ帰った。メキシコからアメリカに入る国境で、私は自分がどんなに簡単に国境を越えられるかを実感し、心を痛めた。現在、国境は、それを越えようとした多くの家族が引き裂かれる場所でもあるのだ。海洋研究者として、科学者としてバハでの時間は実りの多い時間だった。しかし、科学者としてだけでなく、一市民としてまだまだやるべきことがあると痛感する機会となった。
Edited by Victoria Pinheiro, Nereus Program Strategic Communications Lead