気候変動は、海洋に多くの影響をもたらすと予想されている。その一つが、魚の分布である。海の温暖化により、魚はより冷たい海域、一般的に両極や深海へと移動することが予想される。しかし、全ての魚が同じ方向に同じ速さで移動しているわけではない。これが、魚が何を食べ、魚が何に食べられているか、その相互関係を変えている。
Becca Selden (ネレウスフェロー/ラトガース大学)は、気候変動によって捕食と被食の相互作用がどのように変化しているかを見ている。 彼女は、Global Change Biologyに掲載された新しい論文の筆頭著者であり、この論文では、アメリカの北東棚に生息する4種の重要な魚食動物、魚を捕食する魚とその餌について特に考察した。この海域ではすでに急速な海洋温暖化が起こっており、世界の海洋平均より2〜3倍の速さで海水温度が上昇すると予測されている。
「これまでの研究では、孤立した単一種についての気候変動の影響を調べてきた。この研究の強みは、複数の捕食者と被食者間の多数の相互関係を同時に観察したことである。一つの捕食者の役割が低下する可能性がある場合、対照的に熱への適応力を持っている他の捕食者が、これを補うことができるのかということを調べた。」とSeldenは話す。
著者たちは、4種の捕食者、タラ、ツノザメ、シルバーへイクとホワイト・ヘイク、その被食者である主にニシンやサバ、そしてケンサキイカやイカナゴについて研究した。タラは冷水を好むため、これらの地域から移動し、おそらくこの地域に生息する魚を食すのを止めるだろうということが分かった。
「タラのような魚種は、低温の海域でも限られた生息域に属しており、世界的に絶滅する可能性は低いが、現在生息している海域から出ていき、カナダやグリーンランド北部に移動する可能性がある」と、Seldenは説明する。
これに対して、ツノザメは、温水を好むため、生息範囲を広げ、被食者を増やし、主要捕食者としてタラの不足を補う。
これらの発見は、より生態系に基づいた漁業管理の視点の必要性を強調している。
「温暖化は単一種の資源動態への影響として考慮する必要があるが、ツノザメや他の捕食者がタラの役割を埋める可能性があるため、漁獲制限をもう少し保守的にしたい。もし、生態系への大きな影響を避けるためにシステムの捕食を維持したいのであれば、漁獲制限に種の相互作用と、温暖化との相互作用の両方を含める必要があるかもしれない。」とSeldenは話す。