Written by Nereus Alumnus Rebecca Asch,

私たちは、どのように春の到来を感じるか。裏庭の木の蕾が開いたら?しばらく見かけなかった鳥を目にした時?通勤中に咲いているクロッカスを見た時?冬のコートなしで出かけられるぐらい暖かくなった時?これらのサインが全て揃った時?それでは、気温が上がり始めたのに木の芽が膨らんでいなかったり、クロッカスが咲き始めなかったら?それでもまだ春と言えるのだろうか?

海洋も陸上も、温暖化により気候変動が早い春、長い夏、遅い秋、そして短い冬を引き起こしている。しかし、気候変動は、春の性質である合図が乱れる原因にもなっている。これは、春の指標が他のものよりも温暖化に強く反応しているものがあり、生態系のさまざまな構成要素間の季節的な相互作用を乱しているからである。例えば、農業において度々発生する問題は、気温の上昇により果樹が早く開花することである。霜がつき、作物にダメージを与え、農家に多額の費用がかかることになる。これはすべて、木々が季節の信号を受け取っていることによる。

6月1日出版のジャーナルGlobal Change Biologyに掲載された新しい論文は、21世紀の気候が、海洋食物網の様々な部分において季節のシグナルがどのように混乱するのかを調べる初めての研究についてである。Rebecca Asch(ネレウス同窓生/イーストカロライナ大学)、Jorge Sarmiento(研究責任者/プリンストン大学)、 Charles Stock (NOAA) により発表されたこの論文では、海洋食物網の底辺にある藻類が平均で2週間早く開花し始めることを説明している。対照的に、この論文で開発されたモデルは、魚の季節的繁殖は気温の変化にはるかに敏感になり、藻類が大発生する前に魚が産卵するようになると予測している。つまり、魚が急速に成長するために利用可能な食料が不十分な環境に魚が稚魚を放出するということである。

 

季節の状況が変化すると、この写真の幼魚は、生存できない環境に生まれる可能性がある。ノースカロライナのボーフォートにて、イーストカロライナ大学Asch Fisheries Oceanography Labのメンバーにより捕獲された非常な小さな幼魚。

しかし、温暖化が進むにつれ、魚類は極方向、またより深い海域に移動しているという事実により、この図はさらに複雑となる。魚の分布の変化については、William Cheung (UBC) 、 Malin Pinsky (ラトガース大学)などのネレウスアソシエイトのこれまでの研究論文が広範に発表されている。魚が温暖化から遠ざかると、次に季節的な魚の繁殖と藻類の繁殖との相互作用に影響する可能性がある。魚が慣れた気温条件下に置かれた場合、魚は適切な時期に、藻類の繁殖と同時期に出現する可能性が高くなり、魚の子孫の生存のためにより良い状況をもたらす。このように、気候変動に対する魚の反応(極移動)の一側面は、気候変動の他の影響(季節性の変化)に対する回復力を高めるのに役立つ。

一つの問題として、全ての魚が気候変動に同じように反応するわけではないことが挙げられる。魚が生息する水域の極方向の移動を調査した研究の中で、典型的には魚種の約50%が温暖化において予想される反応を示している。他の多くの種は、その位置にとどまるか、予測よりも遅い速度で気候変動に対応する。これは様々な理由が考えられる。例えば、ある魚が住むために特定の生息地(例:藻場またはサンゴ礁)を必要とすれならば、生息地と魚が好む水温の両方が共存する地域はおそらく存在しない。また、有機体が生存するのに適切な温度の地域に有機体が移動できない障壁がある可能性がある。残留する魚がいる理由にかかわらず、移動しないことは、魚が気候変動による新たなストレスにさらされることを意味する。例えば、季節的な産卵などの進化的適応は、生態系の季節性が変化するにつれて気候変動下で不適応になる可能性がある。

魚と漁業が季節性の変化に適応するための一助となるには?

第一に、漁業管理の多くの季節的側面を調整する必要がある。例えば、漁業者の多くは、繁殖の時期など魚のライフサイクルの脆弱な段階を保護するための禁漁期を決めている。これらのライフイベントのタイミングの変化は、禁漁期のタイミングをずらして適応しなければならないだろう。第二に、海洋生息地の保全、および海洋保護区のネットワークの構築が役立つかもしれない。気候変動によって移動をを強いられるため、適切な生息地を確保することは、魚が踏み石として使える場所を作り出すのに役立つ。上述したように、新しい生息地に移動することによって、魚は季節性の変化によりよく対処することができる。この発見は、サイエンス誌で発表された研究によって繰り返された。それは、生息地のモザイクを保護することが、1つの領域を保護することよりもサーモンのより良い保全結果を生み出すということである。その結果、魚と環境の季節的側面との間における気候変動による不一致を最小限に抑えるためにいくつかの対策を講じることができるだろう。

Photo credit (fish larvae): Yuan Zhang, Erika Desiderio-Segovia, Rebecca Asch