ハリバット、ヒラメ、その他カレイ目魚類は、世界中での認知度が高い。このようなカレイ目魚類の年間の世界漁獲量は、主に漁獲過剰と管理介入によって1970年代の300万トンから2000年代の200万トンまで減少した。しかし、漁業だけが脅威ではない。7月初旬に発表された論文の中で、Dr. William Cheung(ネレウスプログラムディレクター・科学)、Dr. Muhammed Oyinlola(博士研究員)は、気候変動によりヒラメ魚類の数が劇的に減少し、今世紀の終わりまでに種の分布が数百キロメートルまで変化するだろうという研究結果を出した。

「ファジー論理」と呼ばれる新しい概念を反映させたアルゴリズムを使用し、CheungとOyinlolaは、脆弱なグローバル漁業に気候変動が及ぼす可能性のある潜在的な影響を探った。より厳格な従来のモデルとは異なり、ファジー論理モデルは、アルゴリズムより人のように機能する。「体調が悪いときに医者に会いに行くことを想像して欲しい。たとえば、熱があり鼻水が出ていたら、医者はおそらくインフルエンザか何か感染症にかかっていると言うだろう。これらの診断は、経験および事前知識に基づいている。診断も変数も正確でなはい。」と話す。

厳密なカテゴリーのある従来の方法では、基本的に生態系のすべての要素には完全な関係があるように捉えている。従来のモデルは、コンピューターの世界では上手く機能するが、現実世界ではそうはいかない。その曖昧さをはっきりと認めることで、科学者たちは不確かさについて、より明確である結論を出すことができる。

彼らは、このユニークなツールを他のシミュレーションモデルと組み合わせ、世界中の47種のカレイ目魚種への気候リスクを分析した。「もし私たちが従来通りの生活を続けたら、今世紀末までにグローバルカレイ目魚種漁獲量は20%減少するだろう。魚種が平均して10年でおよそ40km極方向へ移動するだろ

う。これらのカレイ目魚種の分布における変化は、国境を越えた漁業管理に大きな影響を及ぼす」とCheungは語った。

このパターンは、同じように全てのカレイ目魚種に影響するわけではない。中には他の魚よりも柔軟性がある魚もいる。温帯地帯においては、熱帯や極地では温度があまり変動しないので、非常に高いか低い緯度に住むカレイ目魚種は、生存可能な温度範囲が狭い傾向にある。このようなあまり柔軟性のないカレイ目魚種の漁は、気候変動の影響に脆弱である。温帯地域の先進国は、影響の矢面に立つことはない。気候変動により影響を受けるだろう、漁業に頼る資源の限られた沿岸域コミュニティが数多く存在するインド太平洋諸島などの地域は特に懸念されている。

 

魚が逃げ場を求めて両極に移動するので、養殖業が漁獲量を補っている。しかし、これらの管理された漁業の実践さえも気候変動下では安全とは言えない。「ほとんどのカレイ目魚種の養殖が網いけすで行われているので、これらの魚は、自然環境での変化に影響を受けやすい。加えて、より温暖な海水域で発生しやすいビブリオのような病気が海洋温度が上昇するにつれてより多く見られるようになるだろう。病気のリスクに加え、魚が高温では大きく成長せず、養殖産業に更なる損失を招く可能性がある。

実際の解決方法は気候変動を緩和することだが、適応行動により気候変動の影響によるダメージを最小限にすることができる。 Cheung とOyinlolaは、枯渇した魚資源の再建と、重要なカレイ目魚種の生息域環境を整え、保護することを呼びかけている。「カレイ目魚種に関する私たちの調査結果は、他の魚が気候にどのように影響されるかを予想する方法として使える。カレイ目魚種は一つの例であり、他の魚も同様なパターンとなるだろう。」と Cheungは話す。

 

Written by Victoria Pinheiro, Nereus Program Strategic Communications Lead

Photo by Astrid Westvang