Written by Nereus Fellow Elena Finkbeiner
Photo via Flickr by BermudaMike

気候変動は、単独で作用するのではない。猛暑、長引く干ばつ、海面上昇、サンゴの白化現象及び衰退、深刻な暴風雨、洪水、火災などにより、貧困や食料不安、医療及び救急医療アクセスの制限が起こり、代替の生計手段もなく、差別や男女不平等などの社会問題と相互作用する。貧困、食糧不安、医療や救急サービスへのアクセス不足、他の生計手段を追求するための能力不足、差別、男女不平等のような社会的問題に相互作用する猛暑、長期に渡る干ばつ、海面上昇、サンゴの白化現象及び衰退、深刻な防風雨、洪水、火災などを起こす。気候変動の影響は、気候変動にいかに晒されるか、また人口の脆弱性の違いによって、地理、コミュニティ、社会区分において異なった感じ方をされる。

残念なことに、最も脆弱なコミュニティは、気候変動の影響を最も受ける場所にある。例えば、海面水位が3フィート(91.44センチ)上昇するとバングラディッシュの5分の1が水面下に消え、数千人もの人々が住む場所を失うだろう。インド洋のモルディブや太平洋のマーシャル諸島共和国などのサンゴ礁の環礁は、サンゴ礁の衰退、頻繁に起きる暴風雨、キングタイド(最大級の大潮)によって完全に水没する可能性がある。

多くの人が、自国内でより安全な場所に移住するか、別の国に移住するかの選択を迫られる。彼らは国家の主権を失い、自分たちの土地や起源を含めた文化的価値の崩壊に直面するかもしれない。気候変動による個人、家族、コミュニティ、国家の強制移住により、世界中で数千万の気候難民の移住が起きうる。これは、彼らがどこへ行くのか、彼らに与えられた権利は何かという問題提起につながる。

私は、ハワイで開催されたマーシャル諸島共和国の気候変動、移住、移転に関するワークショップに参加した。ミクロネシア諸島群の一部であるマーシャル諸島共和国は29のサンゴ環礁と1,000以上の島で構成されている。現在、マーシャル人は、深刻な熱波や干ばつ、台風や好天時の洪水など、気候変動の影響に多く直面している。平均して海抜6フィートに位置するマーシャル諸島共和国は、気候変動に起因する浸水により居住不適切なグラウンド・ゼロと考えられている。これらの影響は、高潮で毎月のように家が浸水し、医療、教育、生計機会が制限されることで悪化し、また農業、衛生設備、飲料水のための真水が手に入りにくくなっている。

予想通り、マーシャル人のおよそ3分の1がアメリカに移住している。パラオ、ミクロネシア連邦とともに、マーシャル諸島共和国はアメリカ合衆国と自由連合盟約という国際協定を結んでおり、マーシャル人はビザなしでアメリカ合衆国に自由に移住することができる(マーシャル諸島周辺で10年間に渡り行われた米国核実験のため)アメリカに移住したマーシャル人は、ハワイ、太平洋岸北西部、カリフォルニア、スプリングデールの町、アーカンソー州タイソンフーズの雇用機会により )に住んでいる。

ワークショップは、ハワイ大学法学部環境法プログラムThe Pacific Island Climate Adaptation Science CenterNOAAのPacific Regional Integrated Sciences and Assessments(RISA)プログラムによる共同開催であった。弁護士、自然科学者、社会科学者、ハワイに移住したマーシャル人などが出席した。半日のワークショップで、マーシャル諸島の気候・移住プロジェクトの結果が発表された。マーシャル人移住の原因と影響を分析するための調査コンソーシアムが結成された。

概して、このプロジェクトの結果では、人々はより良い医療、生計機会を求めてマーシャル諸島からアメリカに移住している。しかし、前述した移住原因は、気候要因と密接に関連していた。人々は、マーシャル諸島での病気の主な原因として熱中症や健康的な食糧と水不足を挙げた。同様に、島内での雇用機会の不足は、干ばつ、熱波、真水不足など、同じく気候関連要因に起因していた。さらに、島に戻らない理由として、洪水、浸水、安全が保障されない生活条件を挙げた。この状況下で、気候変動の影響を回避するための積極的な戦略(受け身ではなく)として移住が選択されている。やはり、この状況は、気候変動が単独で作用するのではなく、複雑な社会問題、適応戦略、異なるコミュニティの移行パターンと相互作用している例である。

自由連合盟約(Compact Association of Free Association)のような国際協定によって保護されておらず、気候の影響により避難を余儀なくされる人々は、さらに困難な時期を迎えるかもしれない。1951年のジュネーブ条約(難民条約)(UNHCR)によって定義されているように、難民とは、人種、宗教、国籍、政治的意見、または特定の社会集団のメンバーに基づく迫害のために、彼らの国から逃れることを余儀なくされた人々として法の下で定義されている。一般的に、この技術基準を満たし、法的保護、物質的援助、その他のサービスを受けることができる難民認定を持つ人々のみである。

難民のこの狭い定義は、環境難民、気候難民、または気候変動の影響により安全でない生活状況、生計手段の欠如や食糧不安を理由に自国から避難する人々を含まない。このように、1951年の協定には、気候変動の影響から逃れる人々に対して、法的保護または保障援助を提案していない。1951年の協定では、ある島の環礁から自国の別の環礁に移動するといった国内避難民は対象外である。それゆえ、こういった人々は、国際法で守られておらず、難民支援や援助の対象にはならない。

地球上で最も脆弱な人々が法的支援、または彼らの明確な権利の定義なく国内外に強制移住されたらどうなるか。彼らは差別、虐待、迫害の影響を受けやすくなる。グローバルコミュニティとして、私たちは、気候変動固有の重要な問題に取り組むことが喫緊の課題である。

 

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