陸上の熱波は、乾燥し、ひび割れた川床、長い枯れ木のささくれ立った枝のイメージを思い起こさせる。舗装道路の上には埃のような陽炎が渦巻いている。陸上の温暖化の出来事は想像しやすいが、海洋の熱波は不可逆的な生態系被害につながる可能性がある。Nature に掲載された 研究で、ネレウス研究員 Dr. Thomas Frölicher(ベルリン大学海洋モデリング助教授)が率いるチームが、過去34年間で海洋熱波の出現が2倍になったことを明らかにした。この数は気候変動により増加し続け、水産業に何百万という損失をもたらすだろう。
FrölicherとETH ZurichのNicolas Gruber、Erich Fischeは、1982年から2016年の間に海洋熱波の日数が2倍になっていることを発見した。現在の国の炭素排出量政策に基づいて、世界の平均気温は今世紀末までに3.5度上昇するように設定されている。そうなった場合、海洋熱波の発生頻度は、41倍となるだろう。これは1年に4つ以下だった海洋熱波が、驚くことに122も発生することを意味する。最も大きな影響は、西部熱帯太平洋域および北極海で予測される。
海洋熱波は、生態系を破壊し漁業に大きな打撃を与える可能性がある。近年のオーストラリアの西海岸およびカリフォルニアからの熱波は、海洋哺乳類の座礁、魚の大量死、相当数の動物の冷水域への移動など、被害の可能性を示す不吉な兆候を引き起こした。
サンゴの生態系は特に脆弱である。長時間にわたり熱にさらされると、サンゴは組織に生息する小さくカラフルな藻類を追い出し、白い骨格のみを残す。栄養源となる藻類がなくてはサンゴは餓死してしまう。これまでは、サンゴは白化現象から回復できた。しかし、この現象が短期間で起こるようになると、サンゴはもはや再生する時間がなくなり、不可逆的な損傷が予想される。」と Frölicherは話す。
Frölicherは、衛星データや気候モデルを使用して、海洋熱波がより頻繁に起きるだけでないことを示す。海洋熱波はより厳しく、長期にわたり広い地域を覆って起こっている。「私たちの研究では、海洋熱波が気候変動の結果として一般的な現象となりつつある。海洋生物、特に移動性の低い種への深刻な影響が起こすリスクが非常に増加するだろう。」と説明する。
これらの変化は漁業にも影響を与える。2012 年北西太平洋で起こった海洋熱波は、この地域でロブスターの異常な早期移動を引き起こした。この時はまだサプライチェーンの体制が整っておらず、消費者はロブスターに馴染みがなかった。記録的大漁は市場の需要を上回り、水産業は数百万ドルの価格崩壊と損失を被った。
この海洋熱波の研究は、まだ比較的研究されていない研究分野であり、極端な海洋現象の一部である。極端な海洋現象が、気候変動と関連して議論され始めたのはごく最近のことである。「それらは海洋生態系の完全なる変化につながる可能性がある。場合によっては、長期間経過しても元の状態に戻ることはないだろう。これはまた海洋熱波と共に突然起こる可能性がある。」とNicolas Gruber(ETH Zurich環境物理学教授)は語る。
「海洋熱波の数は、陸上の熱波の数よりも急速に増加している。陸の熱波は海上よりも大きいが、海洋はかなり敏感に反応する。これは、大気よりも水中の方が、温度変動がはるかに小さいためである。それゆえ海洋熱波が発生する可能性は、比較的小さな温度上昇に偏って増加すると予想される。
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Thomas L. Frölicher, Erich M. Fischer, Nicolas Gruber. 2018. Marine heatwaves under global warming, Nature.