ハーバード大学のクリス・ゴールデン博士が筆頭著者であり、William Cheung(ネレウスディレクター・科学)が共著であるNature誌の論評は、漁獲量の減少により、世界の人口の10%以上が今後10年で栄養欠乏症に直面する可能性があることを指摘している。
分析では、亜鉛、鉄、ビタミンA、 DHA、omega-3といった脂肪酸のような微量栄養素を考察した。これらの欠乏により、乳幼児死亡率、発育遅延、認知障害、免疫反応の低下、その他影響のリスクが増加する可能性がある。 Global Expanded Nutrient Supply (GENus) と Sea Around Usからのデータによるこの分析では、もし漁獲量が減少した場合には、世界人口の11%が微量栄養素欠乏症になり、DHA、omega-3脂肪酸のような栄養素が海洋生物のみにあることを考慮すると、人口の19%、すなわち10億3900万人が欠乏の影響を受ける可能性があると研究者は概算した。
これらの影響は、赤道にある開発途上国でより深刻になると予想される。「魚から栄養を摂取することにとても頼っているほとんどの国々が開発途上世界(49カ国中46カ国)にある。」と著者達は記している。気候変動による海の温暖化により、魚達は両極や深海に追いやられているため、2050年までに熱帯地域での漁獲量は30%以上減少するだろう。またこの期間、20%のバイオマスの減少が見込まれ、魚が小さくなることが見込まれる。違法漁業や弱体な政府もこれらの国では問題になっており、おまけに、こういった国々は、栄養状態の良い国々に水産物を輸出している。これらの開発途上国では、これらの微量栄養素を代換として肉、卵、ビタミンサプリメントで補充することが困難だろう
「私たちの研究は、世界の多くの地域で、私たちが人間の健康を得るために健康な海が必要である。しかし、気候、漁業減少、他の人間活動によるストレスで、私たちは、微量栄養素のための水産物に重く頼っている人々にとって最悪の状況を作り出している。多くの人が、気候変動により今後20年で漁獲量が20%以上まで減少すると予想される熱帯地域に在住する。」
この著者達は、水産養殖は、富裕消費者をねらっており、養殖魚は栄養価が低いかもしれないので、管理方式が改善されるべきだし、現在の養殖の慣行ではこれらの問題を解決しないと強調する。しかし、もし水産養殖が、健康な地元な人たちを改善したりより多様な種を手に入れる計画ならば、栄養の面で重要な貢献となる可能性がある。人間の健康、漁業、気候を合わせたデータも研究に必要となる。「私たちは、これらの挑戦に取り組むために、健康な海を作るための解決法のポートフォリオを開発するために多分野にまたがる努力を必要とする。」とCheungは話す。
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Lindsay Lafreniere
Communications Officer, Nereus Program
Institute for the Oceans and Fisheries
The University of British Columbia
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