By Robert Blasiak, Nereus Program Fellow at Stockholm Resilience Centre

Fachidiot! このドイツ語の言葉は、専門(Fach)のことだけを知っている人のことを指す。 最近読んだjournal Ecology & Societyの最新特別号での記事、 “Reconciling Art and Science for Sustainability“のことが頭に浮かんだ。この雑誌は、未知の領域や馴染みのない領域を旅した科学者や芸術家の貢献で満たされており、そして、それは、技術革新をもたらし、自分たちの研究に価値を付加する際に見出された。

この特別号の多くの論文の中核は、多様な関心とインプットを育むことに重点をおいている。例えば、ある記事の中で、Marten Scheffer とその共同著者たちは、「科学における大きな解明は、既存のアイデアと、これまで受け入れられなかったアイデアの奇抜なつながりから起こる」と強調している。

海洋科学の世界は、確かにそのようなアイデアの相互作用の恩恵を受けてきた。耳石について考えてみよう:魚を含む脊椎動物の内耳の中に形成される鉱物構造である。 Steven Campanaの言葉通り:「いったん付着すると、たとえ魚が空腹でも耳石材は再吸収されない。そして耳石の97%は、食事ではなく、鰓を通過する水の無機元素がもとで発生するため、魚は成長しなくても、耳石は増え続ける。そのため、耳石は魚の年齢を決定する上で非常に有用である。遠方の銀河の高画質のNASAによる写真(光年の距離の音を排除するアルゴリズムによってそれを可能にした)にインスパイアされCampanaは、耳石の写真をクリアにするために同様のアルゴリズムを採用し、隠れた成長特性を明らかにし、この分野を根本的に変えた。

海洋研究には、そのような常識にとらわれない思考が重要であり、革新的なアプローチを導いてきている。例えば、高解像度衛星画像は微視的な植物プランクトンの分布と存在量を理解するのに役立っている。アメリカの牡蠣養殖場は次々と破壊されていったのだが、国全土で150年以上にわたり収集された20万種類のメニューを分析することで、牡蠣の価格と可用性を追跡することに成功した。機密解除されたCIA報告書にアクセスするために情報開示法を介した要請があり、ソビエト漁船の歴史的拡張パターンについての研究に情報を与えた。そして、古代ローマ及びギリシャ写本の分析により、トルコ南西部にある6000万個のアクキガイなどの広大な貝塚の説明がなされた。アクキガイは、古代に貴重な紫色の染料を作るために加工された。

この特別号のもう一つの記事では、科学は線形に成長するのではなく、突然のブレイクスルーによって、むしろ中断されたスロー期間を通して成長すると強調したThomas Kuhnについて言及している。過去50年にわたって観察されてきた、人口、水使用、国際観光、自動車、及びそのほか多くの分野の成長「グレート・アクセラレーション」は、アントロポセンの決定要因として述べられてきている。ゆっくりと確実な化学的進化はまだ進行中であるが、ブレイクスルーが実現しなかった場合、加速する世界と危険な不釣り合いとなる可能性がある。

古代ローマ及びギリシャでは、貴重な紫染料は少なくとも三種のアクキガイの貝殻を加工することで作られた。 Image: “Murex Triplex palmarosae” by Daniel Bais, CC BY-SA 3.0.

この特別号は、 Fachidiot状態に対する将来性のある対抗手段で終わる。創造性と革新を生み出す特定の薬は記載していないが、多くの成分を列挙している。それは、ノーベル賞受賞者 John Steinbeck がカリフォルニア湾岸を訪れた科学者たちを記述したくだりを思い出させた。「数人の専門学者たちが湾岸を訪れたが、専門家として彼らが見たいものは何もなかった。」という言葉を。

ROBERT BLASIAK, PHD, 国際協力
ストックホルム大学
ストックホルム大学レジリアンスセンターでポスドク研究員および東京大学客員研究員。東京大学で博士号取得。国家間の紛争と協力が海洋資源の保全と持続可能な利用にどのような影響を与えるかに焦点を当てた。現在の研究は、国家がいかに持続可能な海洋管理を推進できるかだけでなく、国境を越えた企業、政府間機関、非政府組織が果たすことができる重要な役割に焦点をおく。