毎年、 数十万匹ものサメやカモメ、その他の海洋生物が延縄漁業の漁具に巻き込まれて絡まり、殺されている。
ネレウス研究者たちによる新しいモデルは、公海での延縄漁船の月毎の動きを予測するために有用であり、その新しいツールを規制機関に提供できる。それがこれらの脅威を軽減するのに役立つかもしれない。この予測は、混獲リスクが最も高い水域に船舶がどこで、いつ入るかを決定するのに役立つだろう。
「私たちのモデルと混獲されがちな魚種がいそうな場所を示す月ごとのデータを比較すると、船長、国の機関および地域漁業管理機関が一時的に回避したり、立ち入り禁止区域を設けたりすべき潜在的なホットスポットを正確に示すことができる。」とGuillermo Ortuño Crespo(ネレウスフェロー/デューク大学Nicholas School of the Environment.Marine Geospatial Ecology Lab)は話す。
「これは発生時や発生後の問題のみを知る漁業管理に対する対処的アプローチとは全く違い、一歩先を行く先を見越したアプローチである。」と語った。
Ortuño Crespo と研究グループは、8月8日にScience Advancesで、査読された論文に記した新しいモデルについて説明した。
この研究は、2016年に始まったネレウスプログラムと Global Fishing Watchによるコラボレーションから生まれた。このモデルを考案するために、研究者たちはGlobal Fishing Watchと協力して船舶の自動識別システム(AIS )信号から地理空間情報を収集した。AISデータは、2015年と2016年に公海で操業された延縄漁業船の動きと範囲を表している。
その後、海面温度や最も近い海山までの距離など14の環境変数と各漁船の漁獲努力量を統計的に関連付けた。これは、延縄漁業の対象となる種の生息地である海域の季節的適応性に影響を与える。こうすることで、漁船が毎月どこにいるのか予測できる非常に正確なモデルを作ることができた。
新しいモデルは、国の管轄を超えた外洋で、現在最も延縄漁業を行っている日本、韓国、台湾、中国、スペインの船舶のデータを追跡する。将来的には、その他の国々の船も含み、規制当局がグローバルにデータを分析したり、個々の国、海域、または船隊によってデータを分析するための機能がさらに広がりを見せるだろう。
「私たちがこのレベルでの情報を提供できたら、公海で漁業管理を行う機関にとって非常に実用的な管理ツールとなる。この
アプローチは、管理者が将来の漁獲努力量の領域を予測し、漁獲対象外の生物多様性の重複を説明したり、またそれを防ぐことができるだろう。」とOrtuño Crespoは語った。
延縄漁業では、餌付きの釣り針をつけた数百、数千もの釣り糸が、海中を数マイルも伸びる幹縄から吊るされている。漁師は通常、外海の深海上部に生息するメカジキやマグロ、その他の商業的価値のある魚を漁獲するために延縄漁具を使用するが、サメや海鳥など対象外の海洋種も餌に引き付けられ、フックに引っかかったり絡み合ってしまう。
Ortuño Crespoはこう説明する。「ヨシキリザメ、アオサメ、海洋白亜系サメ、オナガザメ、クロトガリザメ は、延縄漁業によって最も多く殺されてしまう海洋生物である。また、生息数の減少が著しいため、IUCNレッドリストに懸念される種として 掲載されている。この産業は、より安全な装置を開発し大きな進歩を遂げてきたが、毎年、数百数千の動物がいまだ殺されている状況だ。」
この研究の共同筆者であるPatrick N. Halpin(デューク大学marine geospatial ecology教授)によると、新しいモデルを規制機関、産業のリーダー、政策決定者に開示することは重要であり、さらに時間が非常に重要となる。
「気候変動や漁業圧力は、外洋における生態学的影響の2つの主な要因であり、この9月に行われる海洋生物多様性を国家管轄外で保護することの国連交渉にどちらも含まれない可能性がある。特に深海漁業を行う国々は、漁業に関する議論をしたくないのだ。私たちの調査結果により、彼らの姿勢に変化が生まれることを願っている。」とHalpin は語った。
Ortuño CrespoとHalpinhaは、 Daniel C. Dunn(Duke大学)、Gabriel Reygondeau、 William Cheung(ネレウスプログラム/UBCChanging Ocean Research Unit)、 Kristina Boerder、Boris Worm(Dalhousie大学)、Derek P. Tittensor (Dalhousie大学)、国連環境計画の世界保全モニタリングセンターと共にこの新しい研究を行った。
資金提供:Nippon Foundation Nereus Program、Google Earth Research Award
CITATION: “The Environmental Niche of the Global High Seas Pelagic Longline Fleet,” Guillermo Ortuño Crespo, Daniel C. Dunn, Gabriel Reygondeau, Kristina Boerder, Boris Worm, William Cheung, Derek P. Tittsensor and Patrick N. Halpin; Science Advances, August 8, 2018. DOI: 10.1126/sciadv.aat3681