Written by Nereus Fellow Tyler Eddy,

モデルは、出かける前や週末の計画を立てるときにチェックする天気予報など、私たちの日常生活の一部となっている。これらのモデルはまた、私たちの住む地球が、炭素排出量の増加によりどれだけ温暖化するのか、そして、きれいな水や空気、陸や海洋から私たちに供給される食糧などの生態系サービスの自然システムへの影響についての予測を基礎としている。将来の気候や自然システムの予測をすると共に、過去の予測と観測を比較して、モデルスキルを改善するのにかなりの時間をかけている。この較正プロセスは、将来予測がより正確になるように、モデル内でプロセスの表現を改善するのに使用される。ドイツ、ポツダムにあるPotsdam Institute for Climate Impact ResearchのJacob Schewを中心に、Nature Communicationsに掲載した ‘State-of-the-art global models underestimate impacts from climate extremes’ と題した論文では、モデル予測と実際の影響を比較するための極端な気象事象として、7万人以上の死者を出した2003年のヨーロッパ熱波の例を挙げた。

Inter-Sectoral Impact Model Intercomparison Project (ISIMIP) は、気候変動の影響をモデル化する方法を標準化するために、広範の分野に渡るモデルコミュニティをまとめるために設立された。この多分野に渡るグループは、農業、地下水、森林、人間の健康、エネルギーシステム、陸上生物多様性、湖沼、沿岸インフラ、海洋生態系と漁業への気候変動の影響に取り組む。ケーススタディとして熱波を用いて、モデルが観測値と比較してどのように影響を予測するかを確認したところ、モデルが、農業、陸上生態系、熱波に関連した人の死亡率に及ぼす影響を過小評価していることがわかった。ヨーロッパの海、漁業において、モデル予測は、漁獲量の観測と類似している。しかし、浅い沿岸種の局所的に観察された集団死亡率は、あまりにも細かく計られるので、より粗く作られたモデルでは表現できない。これから、将来の極端な気象事象による社会へのリスクが、今まで考えられて来た以上となる可能性があるため、この研究はモデルコミュニティのためだけでなく、政策決定者にとって非常に重要なものとなる。

Schewe J, Gosling SN, Reyer C, Zhao F, Ciais P, Elliott J, Francois L, Huber V, Lotze HK, Seneviratne SI, van Vliet MTH, Vautard R, Wada Y, Breuer L,Büchner M, Carozza DA, Chang J, Coll M, Deryng D, de Wit A, Eddy TD, Folberth C, Frieler K, Friend AD, Gerten D, GudmundssonL, Hanasaki N, Ito A, Khabarov N, Kim H, Lawrence P, Morfopoulos C, Müller C, Schmied HM, Orth R, Ostberg S, Pokhrel Y, Pugh TAM, Sakurai G, Satoh Y, Schmid E, Stacke T, Steenbeek J, Steinkamp J, Tang Q, Tian H, Tittensor D, Volkholz J, Wang X, Warszawski L. 2019. State-of-the-art global models underestimate impact from climate extremes. Nature Communications 10: 1005. Link