Written by Nereus Research Fellow Jessica Spijkers,

人間活動は、漁業に今までにない影響を及ぼしている。至る所で発生する違法・無報告・無規制漁業(IUU)により持続可能な漁業管理の試みは覆され、乱獲や管理ミスにより、商業漁業は世界規模で限度量に達している。さらに、気候変動により漁業資源の再分配(熱帯から高緯度地域へ)が起こっているだけでなく、それらの潜在的な生産性と生産量が変化している。研究者や政策立案者たちは、食糧安全と所得保障に与える可能性のある影響を分析しているのだが、これは、海洋生態系に大きく依存している小島嶼国にとって特に深刻であると予想される。しかし、地域的、国際的な安全保障に関する変化の影響は未だ十分な理解がされていない。海洋生態系が影響を受けることによって、漁業資源をめぐる諸国間の紛争はさらに多くなるのか。国際漁業の紛争が安全保障上の脅威となり始めているかどうかを理解するには、紛争の多様性、地理、頻度についてのさらなる知識が必要とされる。

これらの問いを調査すべく、我々は、グローバルなパターンと国際漁業紛争における傾向を精査するために、巨大な比較データセットを使用して最初の縦断的解析を実施した。このデータセットは、1974年から2016年までの間に起きた531件の紛争が含まれている。(これは、死者を出した軍事的行為から、国家間の口頭での対立を含む。)

 

1998年から2007年の間で紛争の報告が少なかった時期があるものの、1974年から紛争の頻度が増していることを見出した。紛争に頻繁に関与する多くが、世界の漁業努力を支配していることで知られる大規模産業漁業力を有する国である。アメリカは、時間の経過とともにほとんどの紛争に巻き込まれており、カナダ、日本、中国、そしてEUが続く。北米とヨーロッパの国々で発生する紛争は(多くの場合、単一種に関連しており、その大部分は低度の紛争であり、時には領土権問題であることが特徴である)、特に世紀の変わり目前に比較的よく見られた。最近では、紛争は主にアジア諸国間で発生し、IUUや領土権問題に関連した暴力的紛争がより頻繁に発生した。

紛争の頻度の高まりとその地理的な知識を基に、気候変動への影響、資源不足、違法行為の加速に直面している中での重要な次なる段階は、これらの対立を引き起こしているものを理解することである。どの環境的、政治的、経済的変数が、問題の核心にあるのかを解析したら、紛争予防のためにリスクを軽減する戦略を設計し、実行することができる。

 

Reference

Spijkers, J., Singh, G., Blasiak, R., Österblom, H., Morrison, H., Billon, P. Le, 2019. Global patterns of fisheries conflict: Forty years of data. Glob. Environ. Chang. 57. doi:10.1016/j.gloenvcha.2019.05.005