Gabriel Reygondeau (ブリティッシュコロンビア大学/ネレウスフェロー)が筆頭著者として執筆した研究、“Biogeochemical regions of the Mediterranean Sea: an objective multidimensional and multivariate environmental approach” がOceanography に発表された。この論文では、地中海の生態系に生物地球化学/生体空間的枠組みをあてはめた。筆者らは、これまでの研究のほとんどが、海表面は異なる環境変数に作用されると仮定し、海表面の生態系を海底の生態系まで拡大することはできないと示唆している。そのため、この分析では垂直次元が重要であり、また小規模で深度によるゾーン分けの中での違いを考慮した保全管理の必要性を強調している。

 

要約

一般的に海を分割する場合、複雑なシステムを、代表的なものに集約し、特定の環境、生物学的コミュニティまたは社会経済的特異性を表すことが狙いである。近年、幾つかの海の地理学的区画に、海洋巡航中に収集されたリモートセンシング、または観測に適用された統計的手法を用いることが提案されている。そのようなマイクロスケールで定義された地理的枠組みは、小規模の化学的および物理的過程で引き起こされる閉鎖性海域の生物地球化学的特質を特徴づけるのにはほとんど適用できないと考える。遠洋領域のLonghurstの生物地球化学的な区分化に続き、この研究では、多数の環境パラメーターを使用して地中海の環境区分を調査する。これらのパラメーターには、環境管理に用いる3D 空間フレームワークを構築するため、水平及び垂直方向の寸法の情報を加えている。(12地域の表層域、12地域の中深海、13地域の漸深海、26地域の海底)

私たちは、次の2つを示した。(1)経度による環境変化の度合いが、生物地球化学的区分に対して与える影響は深度が増すと低くなる。(2)異なる環境要素が作用するので、表面層の区分は垂直層と推定されない。海洋管理は地域規模における深度によって為されるべきだとの考えから、この新しい地中海の区分方法は保全活動に多いに活用できる。

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Image: Mediterranean Sea Region 1569 by Stuart Rankin, CC BY-NC 2.0.