Written by Nereus Fellow Solène Guggisberg,

1982年の国連海洋法条約および1995年の国連魚資源協定の適用に伴い、数十年に渡り、各国は世界中の商業魚資源を管理することを義務づけた地域漁業管理機関 (RFMO)を設立した。マグロやマグロに似た種を対象とする機関もあれば、マグロ以外の種を地理的に管理する機関もある。これらの機関を通じて、各国は、国家管轄外(公海)で漁獲される魚資源、沿岸諸国や公海の管轄下の海域を移動する資源、沿岸国間で共有される資源の保全に協力する。コモンズの悲劇の概念で示されたように、共有資源の利用者全てが枯渇を避けるための努力をしなければならない。REMO会員国(沿岸国および/または関連する資源を漁獲する船舶)は、一般的に毎年これらのRFMOの権限下で資源の保全管理措置を採択する。

 

マグロのRFMO管理下にある海域

 

マグロ以外のRFMO管理下にある海域

RFMOは、今日多くの課題に直面している。RFMOが管理する資源、あるいはその権限下にある海域内でのRFMO非会員の漁船(無規制漁業)など外的要因がある。これにより、更なる圧力、不明な負荷を資源に与えることになる。内部の問題もある。例えば、RFMOは、の意向次第では持続可能な保全管理措置には不十分な採択をするかもしれない。また、会員国が特定の保全管理措置に従うのを拒否する可能性もある。この最後の問題は、国家の同意原則によって可能となってしまう。国家の同意原則によれば、国はその管理措置を受け入れた場合に限り、国際的な義務に縛られる。ほとんどのRFMOの設立に関する文書では、各国は「オプトアウト」として知られるプロセスにより、いくつかの措置を拒否する権利を留保している。実際には、もしRFMO会員国が、これらの措置の適用に興味を示さなければ、持続可能な保全管理措置が長期的な資源の健全性を確保するには至らない可能性を含む。この問題は理論的でない。例えば、NEAFCや ICCATな

どいくつかのRFMOでは、国家が措置を拒絶するという事案が定期的に起きており、依然として悩まされている。多くの場合、これらは全許容漁獲量に関連する。(例:漁獲シーズンを過ぎた特定漁業の漁獲制限や会員国間で一年の漁業期間を分け合う)

近年設立されたRFMOの1つである南太平洋RFMO(SPRFMO)は、各国が引き続き組織に加わることを確実にすると同時に、不必要なオプトアウトを避けるために革新的な手続きを構築してこの構造問題に対処しようと試みている。SPRFMOは、保全管理措置(コンセンサスではなく大多数の締約国に採択された場合でも)全ての締結国を拘束するとしている。設立の法律文書第17条(2)(c)は、異議申し立てを認めているが、ただし「決定が、委員会の構成員に対して形式上または事実上弁解無しに分け隔てをしている、または本条約またはその他の関連する国際法の規定と矛盾する」場合のみである。さらに反対する国は、同等の措置を採択しなければならない。最後に、条約の当事者によって異議が提起された場合、異議がこれらの厳しい条件を遵守していることを確認するために、調査委員会が設置されることになっている。調査委員会は、事前に準備されたリストから選ばれた分野の3人の専門家で構成される。調査委員会の設立から30日以内に公聴会が招集され、設立から45日以内に調査委員会が調査結果や提言を伝えなければならない。

2012年にSPRFMO条約に加盟して以来、会員の2国が保全管理措置に異議を申し立て、調査委員会の設置を発動させた。2013年、ロシアはチリマアジの割当量から除外されていることに反対した。調査委員会は、決定は差別的であるが、ロシアの代替措置は平等でなかったとの結論を出した。その結果、調査委員会はロシアに異なる代替措置をはかるよう勧告した。2018年、エクアドルもチリマアジの割当量に反対した。Nereusの主任研究員Erik J. Molenaar教授を含む調査委員会は、決定は差別的ではないという結果を出した。その結果、関連する保全管理措置は、エクアドルへの拘束力を持つこととなる。両審査手続きは、国家間の紛争解決に関する豊富な経験を持つ政府間組織であるハーグの常設仲裁裁判所(PCA)によって管理されている。PCAの関与により、手続きにさらなる正当性がもたらされ、両方の手続きは、SPRFMO条約で想定されていた締め切りの期限内に首尾よく遂行された。

当事者がオプトアウトする能力の制限と SPRFMO内で設立された審査手続きは、最善の手法であると言える。 SPRFMO条約は、採択された措置が全ての会員国に拘束力をもたらすために全てのRFMOの最も硬固な意思決定を擁する。これは、このような措置効果の要となる。さらに、独立した調査委員会を自動的に設置することで、第三者の紛争解決を通じて個々の国の利益を保護するための強力な保護条項が作られる。これは主に、国家が同等の社会経済的権力を持たない国際機関に歓迎される。さらに、締め切りを厳守することで迅速に決定に達することができる。これは、漁業管理に関する紛争に非常に重要な要素である。調査委員会を設立することで、最終的に当事者間の更なる協力が得られにくくなる紛争に対する、非政治的かつ独立した決議を保証することができる。

SPRFMOのこれらの最善の手法は、各国の保全管理措置のオプトアウトにより引き起こされる問題に対処するために、すべての RFMOが参考にすべきである。それに加え、割当て、公平、開発の権利、または当事者の異議の範囲内で生じるその他の疑義など、漁業ガバナンスにおける重要な議論をする公正で公平な公的な場をRFMOの会員国にもたらすこの手法は非常に有益である。