Written by Dr. Gabriel Reygondeau, Nereus Fellow

自然界を砂漠や熱帯林のように特徴的な気候や土地によって認識できる境界を直観的に分けられる人が多くを占める。これらのアイデアは、生態系1の概念の基礎を形成する。これが海がユニークな課題を提起する所以である。船乗り以外の人の目には、惑星のほぼ3/4の表面は、海の色や波立ちに小さな違いしかなくほぼ同じである。海洋生態学者や海洋学者は、海は生物学的連続体であるか、または別個の生態学的単位であるか2というこの質問に対する正確な答えに何十年もの歳月を費やしてきた。ネレウス研究員はこの質問を深く掘り下げ、気候変動がいかにその答えに変化を与えるかを探り、地球上で人類になくてはならない海洋資源に関して何を意味するのかを解き明かそうとしている。

植物相、動物相、地形に基づき明確なカテゴリに自然を分類したのは、紀元前320年前のテオフラストスによる自然史の基礎的作品、古文書「Enquiry into Plants(植物の調査)」まで遡る。世界規模で、陸上の生態系は、北極林、サバンナ、砂漠、ツンドラ、草原 (Fig. 1)などの主要な単位に自然に編成される。

異なる種や海洋環境が世界中で分類された方法に基づいて、科学者たちは、海洋が実際に海洋マクロ生態系の間に線を引く目に見えないフロンティアで構成されているという結論を出した。これらの生態系の存在を証明するために、科学界は時間に伴う生物の空間分布を理解し、自然が地域、隔離、緯度、深度、高度の地理的/環境的勾配によりどのように変化するかのパターンを解くことを目的とする生物地学を頼みにしてきた。

 

Figure 1. 地球の生物圏のグローバルイメージ。海洋の色は、クロロフィルaの存在量を示し、青紫色は低い存在量、緑、黄、赤は高い存在量を示す。陸上は、茶は乾燥した地域、緑は青々とした地域を示す。

変遷

海洋は、巨大で三次元でダイナミックな存在である。海の規模や徹底的に調査するためには法外な費用がかかることから、長い間、海洋生物地学が個別の生態系に世界の海洋を分類するのを妨げられてきた。サイエンスライターで王立天文学会の最初の女性メンバーMary Sommervilleは、1872年世界の海洋を初めて分類することを提案した。彼女のアイデアは、その時点で利用可能な物理的、化学的知識に基づいて、「同種動物ゾーン」を作ることで冷水域と温水域に分けることだった。これらのゾーンは、後に北大西洋で漁獲される様々な魚種の着地位置におおよそ一致していた。この試みは、海洋が、客観的フロンティアによって分離することができる生物学的および環境的勾配によって構成されることを示した。

その後数年間で、海洋学的ミッションおよび国際協力が増し、多くの海洋分割がなされた。これらの分類システムは、種の分布4 または環境条件5に基づいている。海洋生物地学分野での最大の変革は、70年代後半に衛星が打ち上げられたことである。衛星技術は、風、温度、海氷、海洋色などの海洋生物の分布に影響を与える変数を完全に観察することで、この分野に大改革をもたらした。フィールドサンプリングと比較してリモートセンシングの費用が安いため、海洋生物地質学はここ20年間に発展してきている。科学者たちは、一次生産者の成長6に影響を及ぼす遠隔的に感知された物理的および化学的パラメータを研究することで、海洋の様々な気候領域を特定することができる。

現在の海洋生態地理学

この概念に基づいて、Alan Longhurstが率いる科学者たちのグループは、Biogeochemical Provincesと呼ばれる海洋の生態系単位を特定するための数値的応用を作成した。 Longhurstと研究者たちは、サテライトから観測された海洋の色から、異なる植物プランクトンの種類を識別するためにリモートセンシン

グ技術を使用した。植物プランクトンバイオマスに影響している一連の化学的および物理的変数と組み合わせることにより、彼らは4つのグローバルバイオーム:沿岸、熱帯、温帯、極地に定義した。これらのバイオームは、ユニークな地域の特徴に基づいて56の生物地球化学的な領域に細分された。近年、植物プランクトンから捕食動物における海洋生物分布の研究は、Longhurstが定義した領域を裏付けることとなった。海洋植物や動物の分布の変化は、領域の変化に合致し、Longhurstのモデルが正しく機能したということを示している。

Figure 2. Longhurst(1998)による海洋生物(A)と生物地球化学(B)のオリジナル分割地図。

Longhurstは最初の分類に初めて成功したものの、海洋の複雑さの全てを捉えるとまではいかなかった。海洋は静的ではない。季節の変化、水流の移動、湿度変動、極端な現象が海洋領域とバイオーム間の見えない境界の分布に影響する可能性がある。ネレウス研究員 Gabriel Reygondeauがフロンティアの移動を捕らえるために新しいアプローチを開発した。塩分、温度、クロロフィル及びその他環境パラメータを毎月観測してダイナミック海洋プロセスを数値的に構成することで、彼らは、地球の海の領域とバイオームの分布をリアルタイムでもたらした(図3AとB)。このアプローチは、海洋の3次元性を説明するために深海(200〜1000メートルで見つかった中深海水層)まで延長された(図3C)。この新しいアプローチは、季節的またはエルニーニョのような極端な現象が起こっている間に、海洋生態系の空間分布を変化させる可能性のある相互作用を明らかにした。

Figure 3. Reygondeau et al(2013、2018)による海洋生物(A)生物地球化学(B)中層生態系(C)における分割地図。

観測された領域分布の移動は、マグロやビルフィッシュのような搾取された海洋種の分布移動と酷似していた。これは、海洋資源の持続可能な管理のための気候や生態系の安定性の重要な役割についてさらなる議論をもたらす。さらに進歩するために、生物地球化学領域」という名前の地域単位にいくつかの領域を分けた。それは、海洋保護地域の実施や地域的に搾取された資源の評価など、管理のために活用できる生態学的部門を提供することを目的とした。

Reygondeauが提案したダイナミック領域は、人間の使用のための海洋資源の利用可能性に、気候主導の環境変化がどのように影響するかを検討するために使用できる。これらの領域は、生態学的に信頼性の高い境界をリアルタイムで提供するという大きな利点がある。これは排他的経済水域やFAOの提案する厳しい法律部門からの大きなステップアップである。

 

Figure 4.排他的経済水域(グレー部分=EEZ)または食料および農業(その他の色部分)

 

Edited by Victoria Pinheiro, Nereus Program Strategic Communications Lead

Works Cited

  1. Ducklow HW (2003) Biogeochemical provinces: Towards a JGOFS synthesis. In : Ocean biogeochemistry: A synthesis of the Joint Global Ocean Flux Study, M. J. R. Fasham (Ed.), Springer-Verlag., Berlin Heidelberg
  2. Sathyendranath S, Longhurst A, Caverhill CM, Platt T (1995) Regionally and seasonally differentiated primary production in the North Atlantic. Deep-Sea Research Part I 42:1773-1802
  3. Hardman-Mountford NJ, Hirata T, Richardson KA, Aiken J (2008) An objective methodology for the classification of ecological pattern into biomes and provinces for the pelagic ocean. Remote Sensing of Environment 112:12
  4. Beklemishev KV (1969) Ekologiya i biogeografiya pelagiali (Ecology and Biogeography of the Pelagial). Moscow: Nauka
  5. McGowan JA (1971) Oceanic biogeography of the Pacific. Zn BM Funnel and W R Riedel eds, The micropaleontology of the oceans Cambridge:3-745. Emery & Meincke 1986
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Works Referenced

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Longhurst A (1998) Ecological geography of the Sea, Vol 1. Academic Press, London

Longhurst A (2007) Ecological geography of the Sea, Vol. 2. Academic Press, London

Platt T, Caverhill C, Sathyendranath S (1991) Basin-scale estimates of oceanic primary production by remote sensing- The North Atlantic. Journal of Geophysical Research 96:147-159

Reygondeau, G., Longhurst, A., Beaugrand, G., Martinez, E., Antoine, D., & Maury, O. (2013) Toward Dynamic Biogeochemical Provinces. Global Biogeochemical Cycle. 27. 1046-1058.

Reygondeau, G., Guieu, C., Irisson, F. Benedetti, J. O., Gasparini, S., Ayata, S., & Koubbi, P. (2017). Biogeochemical regions of the Mediterranean Sea: an objective multidimensional and multivariate environmental approach. Progress in Oceanography. 151, 138-148

Reygondeau, G., Beaugrand G., Guidi L., Stemann L., Koubbi P., Henson S. A., Maury, O. (2018). Global BioGeoChemical Province of the mesopelagic layer. Journal of Biogeography. 45 (2), 500-514