Rashid Sumaila (OceanCanada リサーチディレクター)とUBC Global Fisheries Cluster (Sea Around Us とネレウスプログラム) の共同研究「an updated estimate of global fisheries subsidies」が、学術誌Marine Policyに掲載された。この研究は、世界の水産業は年間350億ドルの政府からの補助金により支えられており、この補助金の大部分(年間200億ドル)が、乱獲等に繋がる漁獲能力拡大の助長に充てられている可能性があると指摘している。

論文の共著者であるWilf Swartz(ネレウスリサーチアソシエイト)が、漁業補助金とは何なのか、タイプの違い、これらの結果が意味することについて説明する。

 

漁業補助金とは何か?

漁業に特定した補助のための政府資金。現金の支給、税控除、港やインフラの整備といった公共サービスを含む。

 

どのような種類の補助金があるか?

私たちの研究では、漁獲能力や乱獲に関連して予期される影響に基づき、補助金プログラムを、漁獲能力拡大のための補助金、有益な補助金、両義的な補助金、これら3種類のタイプに分けた。

漁獲能力拡大のための補助金は、漁師がより安い費用で操業できることを目的とする。港の建設、燃料の税控除、大きな船舶の建造やエンジンの改良、器具の最新化などへの援助を含む。

有益な補助金は、水産資源の持続可能性を保証するためのものである。これは、資源管理、漁業管理、科学や研究、規則遵守などへの援助のことである。

両義的(グレイな)補助金は、上記二つを混ぜたものである。漁業がどう実行されるかによるが、漁獲能力拡大のための補助金と有益な補助金によって、漁業支援や持続可能性の確保に意図された両効果があるかもしれない。その一例としては、古い漁業ライセンスの買取だろう。これは、漁師にこれまで以上にお金を戻し、外にある漁船を減らす。しかし同時に、大きなエンジンやネットを積む船舶が援助から得た利益によって増加する可能性もあるということだ。

 

この研究での一番の発見は何か?

私たちは、政府報告書、統計、世界レベルでの漁業補助金の見積書など、できる限りの情報を集積した。その結果、年間350億ドルの補助金が世界中で水産業に交付されていることがわかった。全世界の漁業収益が年間900億であることを考えれば、収益の三分の一が補助金として配分されている。その内訳は、漁獲能力拡大のための補助金が主であり、そのほとんどが燃料の税控除で、経費の半分が控除されているという結論に至った。しかし、漁師が、燃料に対して通常料金を支払うと、おそらく1週間に5日操業する事は不可能となり、その結果、漁獲努力も低下するだろうという問題が起こる。

補助金は、水産業を援助するかもしれないが、漁業資源の持続可能性をつ常に援助しているというわけではない 補助金は、水産業を援助するかもしれないが、漁業資源の持続可能性をつ常に援助しているというわけではな

漁業への補助金のネガティブな影響は何か?

漁獲能力拡大のための補助金は、水産業を援助するが、魚が獲れない時でさえ漁業の存続を可能にもする。そのため、補助金が、必ずしも水産資源の持続可能性や、援助しようとする漁業を守っているとは言えない。つまり、過剰漁業によって資源が減少しているにもかかわらず、補助金により漁業に投資を続けることが許されている場合、資金の投資により生産性が上がるという結果にはならないのである。農業のような他産業でもかなりの補助金を支給されているのだが、漁業は特殊なケースである。これは、農業と違って、漁業の生産性は、その産業の搾取の対象である水産資源の生産性によって左右されるからである。つまり、資源の状態が直接的に産業の生産性を締め付けるからである。

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Lindsay Lafreniere
Communications Officer, Nereus Program
Institute for the Oceans and Fisheries
The University of British Columbia
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