Written by Nereus Research Associate Ryan Swanson,

William Cheung (ネレウスディレクター・科学/UBC) 、Rashid Sumaila (UBC)が共著した新しい論文 “Escaping the perfect storm of simultaneous climate change impacts on agriculture and marine fisheries農業と海洋漁業に同時にもたらされる気候変動の影響による最悪の事態を回避する)“が、Science Advancesに掲載された。著者らは世界の農業および海洋漁業に焦点を当て、それぞれ240か国と194か国を調査した。将来の気候変動の影響に対する脆弱性のために「グローバルな食料安全保障、人間の健康、経済成長、世界中の雇用」における重要な役割としてこれら2つの分野を選んだ。彼らは、2つの温室効果ガス排出シナリオ–「通常どおり」(RCP8.5)と大幅な緩和(RCP2.6)を対比し、より統合された政策介入ができる優先分野を定めるために、2つのセクターの脆弱性の規模(暴露、感度、適応能力)が「将来の気候シナリオの下で相互作用および共起する」方法を調査する。

 農業および漁業の生産性の低下に対して最も脆弱な国は、赤道熱帯地域(ラテンアメリカ、中央、南部アフリカ、東南アジア)にあり、より北の地域(ヨーロッパや北アメリカ)の国ではマイナスの影響が少なく、カナダやロシアなど、恩恵を受ける国々もある。彼らは、最悪の影響を抑制するために、気候変動に対処する行動が世界人口の「圧倒的多数」に利益をもたらすために必要であり、「将来は…食料生産部門内および全体にわたる調整など社会的適応を伴う」と強調している。以下、要旨。

要旨

気候変動は、食料の生産と利用可能性を維持する条件を変え、食料安全保障と世界経済に連鎖的な結果をもたらす。ここでは、地球規模での農業と海洋漁業に対する気候変動の同時影響に対する社会の脆弱性を評価する。BAU排出シナリオでは、世界人口の約90%(ほとんどが最も脆弱で開発途上国に住む)が両方の部門で食料生産の損失にさらされると予測される一方で、2100年までに生産性が同時に向上する地域に住むのは3%未満である。パリ協定の達成に匹敵する大幅な緩和シナリオの下では、最も脆弱な国、そして多くの大規模CO2排出国を含むほとんどの国が、農業と漁業の生産に付随する純利益を得るだろう。将来の気候の影響に対する社会の脆弱性を減らすには、分野内、さらに分野間の戦略的適応と同時に、主要なCO2排出国が率先する迅速な緩和措置が必要である。

Reference:

L. Thiault, C.Mora, J. E. Cinner,W. W. L. Cheung, N. A. J. Graham, F. A. Januchowski-Hartley, D. Mouillot, U. R. Sumaila, J. Claudet, Escaping the perfect storm of simultaneous climate change impacts on agriculture and marine fisheries. Sci. Adv. 5, eaaw9976 (2019). link