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ナッソー・ハタ:フロリダ南沿岸、フロリダキーズ、バミューダ、ユカタン、カリブ海にかつて豊富に生息していた、くっきりとした縞模様を持つ絶滅危惧種。この種は大規模な産卵集群に集まるため、容易に漁師たちのターゲットとなる。20年以上に渡り、カリブ海の自然保護活動家はこの絶滅危惧種を保護する努力を続けており、その成果として、サンゴ礁に住むこの重要な魚体数は安定してきている地域もある。ネレウス研究員Rebecca Asch は、気候変動の影響で、このような努力が今世紀末までに台無しになってしまう可能性を新しい論文の中で報告している。

予想される水温変化によると、もし気候変動が緩和しなければ、82%のナッソー・ハタの繁殖生息地が2100年までに失われるだろう。種の存続のためには、これらの産卵環境が非常に重要となる。加えて、非産卵魚の生息地は46%減少すると予測されている。ナッソー・ハタは、カリブ海で最もわかりやすいサンゴ魚である。高次捕食者として、生態系にかなり貢献しており、サンゴ礁の健全性の指標としての役割を果たす。

しかし、この発見は、この一種のみに影響を与えるのではない。海洋での温度変化の季節的タイミングは、数百の魚種の産卵行動に重要な側面を持つ。魚が不利な条件を避けるために行動を変化させるようになれば、この種の将来は危険に晒される恐れがある。「気候が魚に与える影響を真に理解するためには、最も脆弱な生活史ステージである産卵にいかに影響があるかを知る必要がある。ライフサイクルにおけるこの繋がりが危険に晒された場合、その種全体が危険に晒される。」とRebecca G. Asch(ネレウスフェロー/イーストカロライナ大学漁業生物学助教授)は話す。

ハタは、大規模な産卵イベントに左右される種であり、一箇所に数百または数千のハタが集まる。これらの産卵イベントを追えば、漁師は簡単にハタをターゲットにできる。ナッソー・ハタは歴史的個体数のほんの一部になるまで乱獲され、絶滅危惧種として宣言された。1990年代初頭には、アメリカ合衆国などの国々がナッサー・ハタ漁業を完全に廃止し、ケイマン諸島では特定の繁殖地を漁業から保護することを決定、またキューバ及びドミニカ共和国は、産卵期に漁業を制限するなど様々な保全活動が制定された。

「気候変動の影響により、地域規模で保全活動の成果が無効になる可能性が懸念される。つまり、ナッソー・ハタが特定地域において、産卵のために移動しなくなった場合、産卵環境を保護する必要性がなくなるだろう。同様に、気候変動への対応で特定地域での産卵が行われる月が変化した場合、産卵が確実に保護されるように季節的な保護対策を変更する必要がある。」と Brad Erisman(テキサス大学Austin Marine Science Center漁業生物学助教授)は話す。

産卵集群と呼ばれる大規模な産卵イベントは、生態系の健全性において重要である。サメなどの大きな捕食者は、集まったハタを餌にし、クジラやマンタレイは、放出された卵を餌にする。「このような重要でエネルギッシュなイベントの損失は、生態系全体に悪影響をもたらす。」とErismaは説明する。

気候変動の緩和のための強力な措置が取られれば、繁殖環境の減少は30%に留められると予測されている。次に、科学者たちは、気候変動がカリブ海でハタやタイの12種の産卵にどのような影響を与えるかを考察するための研究拡大を計っている。開発されたモデルは、サーモンなどの大規模な産卵イベントに依存する他の魚種への気候変動の影響を研究するのに役立つだろう。

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Sourced from Esther R Robards-Forbes.