Courtesy of the UBC Institute for the Oceans and Fisheries

北東太平洋の海洋食物網を研究しているブリティッシュコロンビア大学の研究者たちは、ポリ塩化ビフェニル(PCB)および有機水銀などの化学汚染物質の暴露および蓄積が、気候変動下で悪化するということを示した。

Scientific Reportsに掲載されたこの研究では、同じ水域に生息するシャチのような最上位の捕食者と同様にキングサーモンのような中位捕食者における汚染物質の蓄積や暴露の危険性が増加するだろうと予測している。

「これは重要な意味を持つ。太平洋北東沿岸に沿って存在し、南部に定住する全てのシャチはキングサーモンを主食としている。これらの象徴的なシャチなどのクジラ目は、すでに船舶交通、水中騒音、海洋汚染といった多くの人為的影響に直面しており、気候変動に起因する汚染物質の生物蓄積の増加によってさらに影響を受けるだろう。」と筆頭著者のJuan José Alava(UBC Institute for the Oceans and Fisheries’ OceanCanada Partnership及び Nippon Foundation-UBC Nereus Program)は話す。

研究者は、ジョージア海峡、ハイダ・グワイ海域、バンクーバー島の西海岸、アメリカワシントン州のピュージェット湾の北東太平洋の海洋生態系の研究に焦点を置いた。彼らは、シャチの場合、有機的水銀の濃度は、「今までと変わらない」シナリオ、または高いCO2排出シナリオでは8%、PCBsは3%増加すると予測している。しかし、CO2排出量が大幅に削減された低排出シナリオでも、有機水銀の濃度は1%、PCBsは1%未満増加す

ると予測される。さらに悪いことに、キングサーモンの場合、有機水銀とPCBの汚染物質濃度はシャチのレベルよりも約10%高くなると予測される。

Alavaは、近年、おそらく海洋温暖化の影響で太平洋岸のキングサーモンの個体数が減ってきていると特筆した。この研究では、この種のサーモンは、気候変動により拡大される食物網の中の汚染物質の増加に影響を受ける可能性があるだろうと示している。

「海洋生態系は、気候変動、そして同時にまた相互的に作用する人間活動による汚染などの複数の世界的、地域的ストレス要因により脅かされている。私たちの研究では、汚染を減少することがサーモンやシャチのような脆弱な動物における気候変動の脅威を軽減するコーベネフィットがあると示す。」と共同著者のWilliam Cheung(ネレウスプログラムディレクター・科学)は話す。

「この研究は、汚染物質の管理とコントロール、および化石燃料や石炭の燃焼などの人間活動からの水銀と温室効果ガスの排出を制限し防止する潜在的な汚染緩和政策の喫緊の必要性を強調している。」とAlavaは語った。

この研究は、Mitacs-SSHRC共同事業、OceanCanada Partnership and Ocean Pollution Research Program、Coastal Ocean Research Institute (Ocean Wise/Vancouver Aquarium Marine Science Centre)、 日本財団ネレウスプログラムの資金提供による。