Written by Nereus Research Associate Ryan Swanson,

Tyler Eddy (ネレウスリサーチフェロー/ダルハウジー大学)、Miranda Jones(リサーチアソシエイト/UNEP-WCMC)、Derek Tittensor (ダルハウジー大学UNEP-WCMC)、Charles Stock (NOAA)、 William Cheung(ネレウスディレクター・科学/UBC)が共著した論文が米国科学アカデミー紀要に掲載された。彼らはこの研究のために、温暖化が海洋生物に与える影響について標準化されたアンサンブル予測を作成するために、6つのグローバル海洋生態系モデル (MEMs)、2つの地球システムモデル(ESMs)、4つの排出シナリオ(RCPs)、また漁業の影響を組み合わせた。

4つの異なる炭素緩和シナリオが使用された:RCP2.6 (低排出量、強い緩和)、RCP4.5およびRCP6.0(中間排出量と緩和)、RCP8.5(高排出量、特段対策のない自然体シナリオ)。著者らは、漁業がなければ、2100年までにグローバル海洋バイオマスが低排出シナリオ(RCP2.6)で平均5%、特段の対策を講じないシナリオ(RCP8.5)では17%減少すると予測した。「1度気温が上昇するごとに平均5%減少する」。さらに、「漁業は気候変動の影響を実質的に変えない」が、これは将来の漁業(例:努力、技術、管理、保全)、養殖やその他人間の影響に大きく左右されるだろうと特筆している。

グローバル海洋バイオマスの減少は均一ではないが、空間的にも、動物の大きさと海洋食物網における栄養段階によっても異なる。緯度の方向では、極地付近の海洋バイオマスの増加、また温帯、熱帯地域における減少を予測した。

 

単一モデルの結果を使用し、温帯、熱帯地域でのバイオマスの増加と南極周辺での減少を示したIPCCの第5評価レポートに反しているため、これは注目に値する。著者らは、極水域の温暖化が、一次生産の拡大(例:より低い栄養レベルでの動物プランクトンの増加)をもたらし、現在の種の生息地を狭めている温帯、熱帯の温度閾値が超えることが部分的に起因していると考える。一般に、栄養の増幅に起因して、より高い栄養レベルの大きな海洋動物(> 30cm)は、より低い栄養レベルの動物よりも大きく減少することが示された。著者らは、「植物プランクトンのサイズと組成、食物連鎖の延長、栄養効率の低下、代謝コストの高い大きな体」の変化に起因する可能性があることを示唆している。そして、これは食糧源としてそれらに依存しているより大きな海洋動物を含む高い栄養レベルに向かってカスケード効果をもたらすだろう。

この研究予測の影響は、海洋生態系と動物だけでなく、食料と雇用の安定のために漁業と水産物に頼っている人々など広範囲に及ぶだろう。実際に、著者らは、SDG1(生計手段)、SDG2(食料安全保障)、SDG3(ウェルビーイング)、SDG14(海中生物)など、2030年までに特定の持続可能な開発目標を達成するための深刻な課題を示唆している。さらに、最大のバイオマスの減少が見られると予測される緯度の国々(温帯〜熱帯)が、食料安全保障とウェルビーイングのために水産物と漁業に偏って依存する一方で、極地でのバイオマスの増加により、天然資源のアクセスと使用をめぐる紛争の可能性が高まることを特筆している。結論として、著者らは、気候変動の影響を緩和し、海洋生態系の健全性を維持し、国際社会に「必要な機関と管理アプローチを[強化]する」ことを呼びかけることができる、改善された「動的かつ適応可能な生態系ベースの管理」戦略の使用を提案している。

 

Reference:

Lotze, H., Tittensor, D., Bryndum-Buchholz, A., Eddy, T., Cheung, W., Galbraith, E., Barange, M., Barrier, N., Bianchi, D., Blanchard, J.L., Bopp, L., Büchner, M., Bulman, C.M., Carozza, D.A., Christensen, V., Coll, M., Dunne, J.P., Fulton, E.A., Jennings, S., Jones, M.C., Mackinson, S., Maury, O., Niiranen, S., Oliveros-Ramos, R., Roy, T., Fernandez, J.A., Schewe, J., Shin, Y., Silva, T.A.M., Steenbeek, J., Stock, C.A., Verley, P., Volkholz, J., Walker, N.D. and Worm, B. (2019). Global ensemble projections reveal trophic amplification of ocean biomass declines with climate change. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 116(26), 12907-12912. link