今日、そして未来に、海や漁業が直面する多くの問題を解決することは困難である。

例えば、ある一種類の魚を例にとってみても、その種の個体数、その種が生態系にどのように寄与しているのか(何を食べて、何に食べられるのか)、気候変動の影響をその生態系がいかに受けるのかを考察することが重要だ。それだけではなく、その魚を重要な食料源とし、生計を立てる源としている人々がいるか。法律によって誰がその魚の漁を許可され、またその法律は公平なのか。そしてその魚は、伝統的に、霊的に先住民の人々にとって重要であるのか。その魚は観光業のために重要なサンゴ礁に住んでいるのか。この質問は一見終わりがなく、パズルの各ピースに関するハイレベルな知識なくして回答することはできない。

ネレウスプログラムは、世界中から多分野の専門家が集まり、彼らの情報や意見をもって海洋問題に立ち向かうために作られた。5月30日から6月3日にかけて、ネレウスプログラム年次総会が開催され、およそ50人の専門家がブリティッシュコロンビア大学に集結した。新しい研究、ワークショップのアイデア、プロジェクトの共同研究、人脈作り、海の問題についての新しい考え方などを情報共有するための重要な一週間であった。

2016年ネレウスプログラム年次総会にて、Chris McOwen(主任研究員)は、ケンブリッジ大学世界自然保全モニタリングセンターでの現在の研究について報告した。

「この年次総会は、未来の海の持続可能性という重要な問題に立ち向かうために、いかに本当の意味での分野横断と国際共同研究が重要であるかを示すよい例となった。私たちの討論では、世界規模の課題である海の持続可能な開発目標を達成するために、研究の統合、能力開発、知識のアウトリーチに焦点を当てた。」とWilliam Cheung(ネレウスディレクター・科学)は話す。

ネレウスプログラムのパートナー機関、デューク大学、プリンストン大学、ケンブリッジ大学(世界自然保全モニタリングセンター)、ユトレヒト大学、ストックホルム大学の主任研究員、フェロー、プログラム同窓生の他、ゲストも参加した。日本財団常務理事海野光行氏、プログラムオフィサー桑田由紀子氏は、研究動向を話し合うために参加者たちと会合し、分野横断的研究の重要性とその研究結果の重要事項をいかに一般に伝えるかというアウトリーチの重要性を強調した。

伊藤進一教授(東京大学大気海洋研究所)は、2016年ネレウスプログラム年次総会にて基調講演を行った。

「ネレウスプログラムが、常に前進しているのは素晴らしいことだ。私たちは、これからも明確な立場にたって我々の知見を広められるよう努力しなくてはならない。そのためには、我々が掲げるビジョンや海への理解に関しさらなる多様性を提示して行く事が重要だ。」と日本財団常務理事、海野光行氏は話す。

また、伊藤進一教授(東京大学大気海洋研究所)は、”Pelagic fishes in the western North Pacific(北太平洋の深海魚)”という題目の基調講演を行った。講演では、北太平洋地域とそこにおける漁業のユニークさと気候変動への反応に関する説明があった。

Hanson Hosein(ワシントン大学Communication Leadershipプログラムディレクター)は、基調講演“A Storytelling Uprising”でアウトリーチの必要性を強調した。Hoseinは、海の問題と人との関連づけは不可欠であり、それぞれのアイデンティティーに訴えることでいかに伝達できるかを論じた。

2016年ネレウスプログラム年次総会グループ写真(開催地:カナダ・バンクーバー・UBC)

出席したネレウスフェロー達は、自然科学から社会科学の分野に渡り、海洋生態系、エコシステムモデリング、養殖、漁業経済、国際漁業法、先住民漁業など現在の研究プロジェクトについてのプレゼンテーションを行った。

「このプログラムを推し進めているすべての方々、同窓生に感謝している。我々の科学、そして人を救いたいという思いによって、本当の意味での変化を起こすことがこのプログラムの目的だ。持てる力を全て出していきましょう。」とYoshitaka Ota(ネレウスディレクター・政策)ネレウスメンバーを前に話した。

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