Written by Nereus Fellow Colin Thackray,

海中で検出される水銀の濃度は非常に低い(1リットルあたり10億分の1グラム以下)。しかし、特に食物連鎖の上位に位置するメカジキやマグロのような、私たちが食する魚には、高濃度で存在する。MeHg(メチル水銀)は、生物蓄積性が高く、毒性の高い水銀であり、魚を食べることによって人々の健康に悪影響を及ぼす。海中濃度は低いにもかかわらず、どのようにして多量のMeHgが私たちが食べる魚に含有するのか。その答えは、プランクトンが取り込み、海洋食物網内でに生物蓄積するためであり、この 過程の第一段階が大きな理由なのである。

水銀は、石炭を燃やすなどの人間活動によって大部分が放出された後、河川から海洋に入ることも少しはあるが、そのほとんどが大気から海洋に入り込む。海洋に到達する水銀は、大部分が無機物であるが、その一部は海洋の微生物によってMeHgに変換される。この低濃度のMeHgが、海水からプランクトンへの第一段階で蓄積が起こり、食物網の中で拡大される。

プランクトンとは、太陽からエネルギーを得る植物プランクトンであるごく小さな植物を含む海洋食物網の底辺にある生物と、エネルギー源として他のプランクトンを食べる大き目な動物プランクトン(それでも小さいが)のことだ。植物プランクトン自体は、直径約1〜100ミクロン(0.001〜0.1mm)の顕微鏡サイズであり、そのサイズはMeHgの取り込みに大きな影響を及ぼす。より小さな植物プランクトンは、その細胞表面(MeHgが通過する)が、より大きな植物プランクトンよりもその体積に比例して大きいため、MeHg濃度がより高くなる。

 

この取り込みを通じて、植物プランクトンは、その個体の大きさによって、周囲の水よりも500〜500,000倍高いMeHg濃度となる。植物プランクトン群集の構造は(例:小、中、大のプランクトンの個体数)栄養分の利用可能性によるものであり、最も小さく、濃縮率の高いMeHgを含む大量の植物プランクトンをもたらす海洋条件がある

これらの植物プランクトンは、動物プランクトンの食糧源となる。動物プランクトンは、植物プランクトンに存在するMeHgを一緒に摂取するが、MeHgを細胞から除去するスピードを摂取するスピードが上回る。これは、植物プランクトンと比較して動物プランクトンの中でMeHg生物蓄積につながる。興味深いことに、異なる条件下において、動物プランクトン濃度の範囲は、植物プランクトン濃度の範囲ほど大きくない。これは、栄養分の利用可能性、MeHgの取り込み、および植物プランクトンの総量に関係がある。植物プランクトン中で、MeHgの最高濃度を引き起こす条件は、その捕食者の食糧不足の条件でもある。捕食量が低下することにより、動物プランクトンのMeHg摂取量が減少する。MeHg濃度が低い植物プランクトンである状態というのは、動物プランクトンが植物プランクトンを多く捕食する条件でもある。動物プランクトンは、食糧が豊富にあるため大量のMeHgを摂取することになり、成長するにつれ、MeHgをより迅速かつ効果的に希釈する。これにより、動物プランクトン中のMeHgの濃度は、周囲の海水よりも50,000〜1,000,000倍高くなる。MeHgが魚に到達する前の海水中の水銀濃度とこれだけの差ができるのは、海水中の微量の水銀を海洋食物網の中で濃縮させていくからである。

Paper:

Amina T. Schartup, Asif Qureshi, Clifton Dassuncao, Colin P. Thackray, Gareth Harding, and Elsie M. Sunderland. A Model for Methylmercury Uptake and Trophic Transfer by Marine Plankton Environmental Science & Technology 2018 52 (2), 654-662 DOI: 10.1021/acs.est.7b03821