By Colin Thackray, Nereus Fellow at Harvard University
海洋食物網で生体蓄積するメチル水銀や神経毒がマグロに多く含まれていることはよく知られている。マグロがより小さな魚やプランクトンを食べた小さな魚を食べる、これはメチル水銀がさらに食物網で拡大し、すべての魚が汚染される可能性があることを意味する。
メチル水銀は、非常に有毒であり、子宮内でメチル水銀にさらされた赤ちゃんへの知的障害など、発達と健康に悪影響を及ぼす。このため、妊婦は寿司を食さないように勧められている。水産物消費は、人体での有機水銀の80%~90%を占めている。石炭の燃焼や鉱業のような人間活動は、海での水銀レベルを増加させる主な原因である。
水銀は、マグロの中の生物蓄積性有害物質の一つにすぎないので、マグロの消費者は選択した水産物がどのくらい汚染されているのか知りたいと考えているだろう。しかし、「私が食べているマグロはどれくらい汚染されているのか」に対する答えは、マグロが漁獲された場所により有毒な汚染物質のかなり異なる濃度を持つということを示す研究を考慮すると、一つの答えを特定するのは難しい。(“Geographic Differences in Persistent Organic Pollutant Levels of Yellowfin Tuna(キハダマグロの残留性有機汚染レベルの地理的相違)” 及び“Mercury levels of yellowfin tuna (Thunnus albacares) are associated with capture location(キハダマグロの水銀レベルは漁獲位置に関連する。)” 参照)
一匹の魚に見つかる生体蓄積性汚染物質の原因は多い。メチル水銀の例を使い、海水中の局所的濃度から始めてみよう。水中にメチル水銀が多ければ多いほど、食物網で取り込まれる可能性が高くなる。水銀が海洋微生物によって有毒なメチル水銀に簡単に変わる地域があったり、近くの海水メチル水銀は、世界の異なる地域で大きく異なる。
次に、海洋食物網の底部、海の光合成であるプランクトン微生物の集塊で起こるメチル水銀摂取がある。プランクトンコミュニティの組成は、海水から食物網に入るメチル水銀の量に影響し、その組成は、世界中でかなり異なる光と栄養の豊富さのような環境要因に依るところが大きい。
一度メチル水銀が食物網に入り込むと、魚が自分の体から取り除くよりも早く食べ物から取り込むので生体蓄積される。異なる種の魚は、隣り合う同種の魚と比べ異なる水銀レベルを持ち、マグロの視点から、マグロが食する餌種のタイプがメチル水銀濃度の問題となるだろう(もちろんマグロにはわからないわけだが)。マグロの胃内容物を分析することで、世界の海の異なる地域で、同じマグロの種類でとても異なる食餌を採ることがわかった。これらの食餌の違いは、マグロが高水銀食を食べている地域では、水銀濃度がより高く、それ以外は同じである。
どこでマグロを漁獲したかでマグロの汚染が異なる原因となる可能性があるのなら、あなたがマグロを本当に把握して選び取るのはまだ難しいかもしれない。というのも、商業的に分配されるマグロについて期待すべき一番の情報であろう原産国を知っているとしても、汚染に関する情報はまだまだだからだ。多くの国々が海の広い地域でマグロを漁獲しているし、国が大きければ、一つの国の海岸近くの沿岸域さえ大きな汚染の違いがみられる。マグロの毒性を本当に心配しているのであれば、汚染物質濃度の低い魚に代えることで消費量を調整するのが賢明であると考える。
COLIN THACKRAY, PHD, ATMOSPHERIC CHEMISTRY
Harvard University
Colin Thackrayは、大気物理学および科学の数値モデリングに経験を持つハーバード大学のポスドクフェローである。彼は、漁業健康や持続可能への毒性物質の査定する海洋食物網での物理的環境を通じて、水銀のような人為的な有毒物質の排出(大気および海洋への)を追跡するモデリングのフレームワークを構築している。このフレームワークは、変化する漁業・気候・排出量の変化に今後の漁業の持続可能性を予測するのにも役立つだろう。