沿岸水域でのクラゲの目撃情報が、以前と比べ増えている。地域別ケーススタディによると、多くの人が、海水の温暖化によってクラゲ個体群規模が爆発的に増大してきていると推測している。しかし、これを裏付けるデータセットはあまりない。Natasha Henschkeは、ネレウスプログラムでこのトピックに関する研究をした。

Henschkeは、プリンストン大学でネレウスの博士研究員として、主に気候変動に対するクラゲの反応について2年弱研究した。

Henschkeは、海水温の上昇に伴って、クラゲの個体数が増加しているという一般的な考えを検証するため、過去40年以上の間にクラゲの個体数に何が起こっているのかに注目し、現実的シナリオを見つけるために温度と動物プランクトン食物データを統合したハチクラゲ人口モデルを構築した。そして、気候に応じてクラゲのバイオマスが地域的に増加してきていることを確認した。

Henschkeの研究は、動物プランクトンが異常に増殖した年には、クラゲの大量発生が起こり、クラゲの大量発生動態は食糧供給の変化と強く結びついていることを確認した。動物プランクトンが増殖した年には、クラゲの個体数に2つの主な利点がもたらされる。産卵の増加、これはこのシステムの中にさらにクラゲが加わり、成長率が上昇し、結果としてその個体数は増えうまく繁殖する。逆に、クラゲの個体数に十分な食料資源がある冷水の海域で温度の影響を受ける。それゆえ、食糧の供給力も増加しない限り、温水域ではクラゲのバイオマスを増加させる可能性は低い。ここまでの調査結果では、クラゲバイオマスが増加するために最も影響を受けやすい海域は北緯60度あたりである。しかし、このモデルは、富栄養化、乱獲、都市化といったクラゲバイオマスに影響を与える可能性のある他の人為的要因は今のところ含まれていない。

クラゲの繁殖は、発電所を詰まらせたり、養殖場の魚が死んだり、漁網を破裂させるなど壊滅的な影響を与える側面もある。世界的にクラゲの個体数が爆発的に増加していると想定することはできないが、そのような繁殖の壊滅的な影響を緩和するために、クラゲの繁殖と人為的要因との関連性に一般的な理解を高めるために地域特有の研究をすることで、独特のケースとしてすべてのクラゲの繁殖を取り扱うことが出来る。

彼女は、ネレウスプログラムのフェローとして論文を発表し、もう2つを完成させようとしている。また、スペインのバルセロナ、ベルギー、ノルウェー、イギリスのプリマスで国際会議に出席した。

 

Henschkeは、ネレウスプログラムでの経験を振り返り、「ネレウスでのハイライトの一つは、幅広いコミュニティーの人々と交流したことだった。ネレウスのおかげで、以前には経験したことのなかった異なる観点から海洋科学を見る機会を持つことができた。考えたこともなかったある一つの小さなトピックが地球規模の広い気候状況に関連している。ネレウスはグローバルな視野を作り出すために、自然科学や社会科学を統合することへのたゆまぬ努力を続けている。

Henschkeは、動物プランクトンコミュニティの動性、気候変動がこれらのコミュニティの構造と機能にどのように影響するのかという研究に関心を持つ。今後は、ブリティッシュコロンビア大学 Earth, Ocean, and Atmospheric Sciences Departmentの博士研究員としての新しいポジションでこれらの関心を探り続けるつもりだ。このポジションでは、南大洋のサルパの個体数モデルを作成する。気候変動によってオキアミの生息地へサルパが移動することによる影響を調査するためにオキアミのモデルを開発している他の研究者たちと協力していく。