すべての魚が同じように遊泳するわけではない。小さな家ぐらいのサイズを泳ぎ回って一生を過ごす 魚もいれば、たった数か月で大西洋を渡り5000kmも移動する魚もいる。こういった魚でさえ、多く の変動がみられる。

「クロマグロのような魚の中には特定の移動ルートがあり、そのほとんどがA点からB点へと移動す る。そのような魚は一つの場所で繁殖し、もう一つの場所まで餌を探しながら移動するというライフ ステージを持つ。キハダマグロのような他の魚は、特定の移動ルートを持たない。このような魚は、 熱帯の海全体を移動し、繁殖する。」と Daniel Dunn (ネレウスプログラム主任研究員/デューク大 学)は話す。

Dunn は、 Patrick Halpin(デューク大学)と共に、海洋空間計画における大きなギャップを埋める新 しいプロジェクトを率いている。魚、ウミガメ、海洋哺乳類、海鳥を含む1000種以上の海洋生物の 移動と接続性についてのデータをまとめている。そして彼は、移動性動物種保護に関する条約第12回 締約国会議 ( COP 12) のサイドイベントで、新しいシステムについてのプレゼンテーションを行っ た。

Nereus Program PI Daniel Dunn discusses the MiCo system at COP12. Photo by IISD/ENB | Kiara Worth.

デューク大学Marine Geospatial Ecology Labは、現在、海洋の移動接続性 (MiCO) を説明するための あるシステムを開発するためにパートナーのコンソーシアムを先導している。海洋の移動行動に関す るそのようなシステムは初めてとなる。このシステムの開発についての詳細は、ネレウスフェロー Guillermo Ortuño Crespoのブログでご覧ください。

この会議は3年おきに開催されるため、「早期に関係者と協力し、初期結果を提示しフィードバック を促す良い機会」であったとDunnは話す。DunnとOrtuñoCrespoはまた、国連の準備段階である 国家 管轄権外区域 (すなわち、公海)の生物多様性の保全と持続可能な利用のための新たな条約に関する 交渉を通知することにも関わっている 。

「繁殖と餌を探して移動するといったライフサイクルステージについてはよく知られている。国内の管轄区域内で大多数の種がこのライフサイクルを行う傾向にある。しかし、魚は一つの場所から他の場所へ到達するために公海を通る。これが真の問題である。海洋が大きなデータブラックボックスに なる時、これが現実的な問題である。海洋空間計画を補強する知識に大きなギャップを生み出すのだ。」

Dunn は、これらの種に関する分布データを持つことは十分でないと話す。これらの種によって海が どのように繋がっているのかを見るためのネットワークモデルを開発もしていく。「海のある部分の 糸を引っ張ったら海の反対側で何が起こっているのかが見える。」彼は、ある場所で巣を作り、数千 キロも離れた他の場所で餌を食べる海鳥の例を出している。

「もし、インド海の真ん中にねずみを放ち、繁殖コロニーを破壊したら、彼らが餌を食べる場所、例えばオーストラリア、もしくわチリの生態系に影響を及ぼすだろう。それは地球の反対側であるが、その場所は繋がっていて、影響は両方の場所で見られるだろう。」

Dunnは、公海管理や国家管轄権外区域プロセスでの役割を持つ 移動性動物種保護に関する条約にポジティブなフィードバックや高い関心が寄せられていると述べる。このイベントは、関係者や機関に 働きかけ、議論をスタートさせるといった意味で成功であったと言える。