Written by Nereus Research Associate Colette Wabnitz,
海に関する多くのニュースが悲観的なメッセージばかりである。海が直面している大きな脅威と、生物多様性喪失の危機を打破する役割(最新のIPBES report)を私たち自身や一般の人々に周知することが重要な一方で、解決策のない悲観は無関心につながるため、海の解決策を有効にするための科学を調整し統合する必要性も高まっている。Nancy Knowlto、Cynthia Vernon 他と#OceanOptimismの共同創設者であるElin Kesleyは、次のように要約する。「コロンビア大学のCenter for Research on Environmental Decisionsの研究者たちによると、あまりにも悲観的な心配で人々の許容量がいっぱいになってしまうと、感覚的な麻痺を引き起こす。変化をもたらすには私たちの行動が小さすぎると思ってしまうと、私たちはその期待を実現する状態を作り出すよう行動する傾向がある。絶望すると私たちが創出しようとしている海洋問題との関わりは台無となる。一方で、希望を感じることで意味のある行動をとる能力が高まるのだ。」
この基本精神の下、OceanVisions summit[1]では3つの目標を置く。 (1) 科学者たちがレジリアンス、適応、緩和、及び持続可能性の分野で海洋ソリューション研究に焦点を当てることができるフォーラムを展開する。(2) 人間、気候、生態学の次元に渡る拡張可能な解決策を増幅し促進する。(3)研究、公的、私的、非営利団体の間の協力、誓約のためのプラットフォームを作成する。これらは、6つのセッションと、海洋研究の様々な分野において真にソリューションを追求する研究(水族館でのOcean Visions Startups & Solutions Eventを含む)に関する認識と関与を促進することを目的としたイベントで取り上げられた。6つのセッションは以下である。
- 適応型社会生態系システム:沿岸域の気候変動
- 沿岸生態系のレジリアンス:熱帯海洋とサンゴ礁
- 海の健全性の保全:海洋酸性化と低酸素
- 海洋資源の持続可能性:海洋空間計画
- 緩和:ブルーカーボンの拡張可能な戦略
- 海洋システムへの人間と気候の影響の統合モデリング
各セッションで3つの基調演説が行われ、それに続いて多くの発表者が、研究(自然、社会、エンジニアリング)が海洋ソリューションにどのように貢献するのか、その研究をさらなる行動志向型の橋渡しのためにいかに拡大できるのかに焦点を当てた。4日間に渡るサミットのライブレコードはこちらへ。
COMPASSと連携して開催されたので、著名なジャーナリストや科学者のパネルによる模擬記者会見という形での素晴らしい会議の開幕となった。また、会議の間、参加者が自身の経験を紹介したり、より多くの参加者に科学をうまく伝えるためのヒントを得たりする機会となった。Becca Selden(ネレウスフェロー)は、セッション6で、アメリカ東海岸の漁業コミュニティが、気候変動による種の移動にどのように対処しているかに関する自身の研究を紹介し、Marine Media Mixer Receptionで素晴らしい発表をした。
この会議には、幅広いキャリア、出身地、分野の参加者たちが出席していた。残念なことに、近年の米国ビザ発給制限のため、参加する資金援助があるにもかかわらず多くの有望な若手研究者が出席することができなかった。プラス面としては、女性の代表は非常に際立っており、サミットのハイライトとなった。COMPASSパネルでの5人の著名な科学者のうち4人が女性であった。また、63人の発表者のうち31人が女性で、多くの女性が聴衆として参加していた。
主催者は、Ocean Visionsサミットを2年ごとに開催する予定である。「OceanVisions2021-海洋汚染(特に破片やプラスチック)」や「OceanVisions2023-食品システム(
漁業や水産養殖に由来する持続可能な食料生産を支援する海洋の能力)」など特定のテーマを軸に展開する予定なので、ぜひ今後も注目して欲しい。
*ネレウスの主任研究員 Malin Pinksy は、セッション5−緩和策:ブルーカーボンの拡張可能な戦略で発表した。
Photo below courtesy of COMPASS
COMPASSチームとジャーナリスト(左から順に: Stephen Posner [COMPASS], Chris Joyce [NPR], David Malakoff [Science], Nancy Baron [COMPASS], Kendra Pierre-Louis [New York Times], Jon Suttner [CNN], Laura Helmuth [Washington Post], Lori Arguelles [COMPASS])
Footnote:
[1]IOC-UNESCO、海洋保護団体、COMPASS、大規模なOceanVisionsイニシアチブの一部として開催。ジョージア工科大学、スミソニアン協会、スタンフォード大学、スクリップス海洋研究所、スキダウェイ海洋研究所、モントレーベイ水族館、ジョージア水族館、バーチ水族館におけるパートナーと共同開催。詳細はこちらへ:http://www.oceanvisions.org/ocean-visions-initiative