今年、ネレウスプログラムはUBC Green Collegeと「海洋と漁業における世界的変化へ適応するために」についてセミナーシリーズを開催する予定である。このシリーズは、海の変化がどのように環境や人々に影響しているかを探求する7つの講義からなる。秋に行われる最初の3つのセミナーを下記に紹介する。残り4つのセミナーについてもまもなく発表する予定。このセミナーは、UBC(6201 Cecil Green Park Road, Vancouver, BC, Canada)で行われ、無料で一般公開される。

 

シリーズについて:海は、人間活動、特に気候変動、漁業、汚染、生息地破壊により、前例のない速度で変化している。生物多様性、生態系サービス、水産物を産出する能力の損失について、海洋科学者、政策立案者、関係者たちの間でより深刻に懸念されている問題がある。これらの環境の変化が拡大するにつれ、我々が適応するための戦略を見いだすためには、環境変化に対する反応、脆弱性、この変化する海の影響を理解することが不可欠だ。

我々ネレウスは、海洋の状態や気候変動下で将来予測される状況についての最新の研究成果の概要だけでなく、気候変動の生物多様性や漁業への影響、脆弱な地域やコミュニティでのケーススタディ、また市場志向型の解決策や国際政策がいかに環境変化への適応を円滑にできるか、などについての知見を伝える機会となるよう目指している。

このセミナーシリーズでは、世界の変化に適応するための校正かつ社会的な戦略を議論するために、生態学から先住民の知識、さらに経済や技術開発など様々な分野の専門家たちが集結する。

 

【講義1:変化する海ー我々も変化するのか?場面の設定】

9月22日木曜日 5-6:30pm

Yoshi Ota (ブリティッシュコロンビア大学/ネレウスプログラムディレクター・政策)

William Cheung (ブリティッシュコロンビア大学/ネレウスプログラムディレクター・科学)

Rashid Sumaila (ブリティッシュコロンビア大学 OceanCanada)

Larry Crowder (スタンフォード大学 Center for Ocean Solutions)

海は変化し続けており、人間社会はそれに適応する必要がある。この変化の規模はどのくらいで、どのような影響があるのだろうか。環境変化に適応するためには、環境の影響と社会的影響が同時に表れた際に対処できるよう、現在の枠組みを変える必要がある。我々はこの新しい海にどのように適応するのだろうか。最初の講義では、このセミナーシリーズの大前提となる、変化する海と我々の適応への経路を定めるだろう。Cheung博士と太田博士(日本財団ネレウスプログラムディレクター)は、海と漁業の未来の状態を説明するために、自然と社会科学の両視点から講義を行う。また、ゲストを招き、パネルディスカッションでそれぞれの専門分野における展望をもって議論する。

 

【講義2:Global Fishing Watch:サテライトを利用した漁業活動の追跡】

10月27日木曜  5-6:30pm

David Kroodsma (SkyTruth, アメリカ)

世界の漁業努力を監視するために空に’目’を備え付けることができるか?Global Fishing Watch は、漁業の影響を把握するために、サテライトで集めたリモートセンシングを使用する。Global Fishing Watchは、SkyTruth、Oceana、Googleが技術提供し、海での追跡可能な漁業活動を示すためにデザインされた製品である。このウェブツールは、空間と時間の中で世界の漁船団を可視化し、誰でも見られるように作られた。Dr. Woods( Skytruth 最高技術責任者)は、世界の漁業の衰退につながっているストレス要因の一つである世界中の漁業努力を公開する予定だ。そして、彼は、我々がどのように共有資源である漁業を保護できるのか、またそれが公海上においてなのか、もしくは個々の国家の主権水域内においてなのかを討論する予定である。

 

【講義3:海洋における気候と汚染物質:メチル水銀に対する人間と生態系の反応】

11月17日木曜日 5-6:30pm 

Elsie Sunderland (ハーバード大学)

メチル水銀は、子どもの長期的な発達遅延を引き起こすことが知られている強力な神経毒であり、成人の心血管の健康障害と関連し続けている。鉱業、燃料が燃焼することによる水銀の排出により、世界的に、大気、海洋、および陸域生態系の中で自然宿主をもたらし豊かにしてきたが、将来の変化の程度や、今後排出した場合に反応が現れる時間スケールが非常に不確実である。これは人為的な水銀排出に関する国際条約への発展の一環として、近年注目されている。 Dr. Sunderlandは、メチル水銀に対する人間や生物学的被曝を制御している要因に関する近年の考察、およびそのようなリスクのための気候変動の影響について議論する。