Becca Selden (ネレウスプログラム/Wellesley College)とMalin Pinsky (ネレウスプログラム/Rutgers University) が共著した、米国北東部の急速な温暖化における海洋魚種の範囲シフトに関する新しい論文がGlobal Change Biologyに掲載された。著者らは、年間の寒冷範囲エッジと温暖範囲エッジのエッジダイナミクスを分析し、寒冷エッジよりも温暖エッジが気候追跡の優れた指標であることを発見した。全要旨および記事はこちら

要旨世界中の魚種が気候変動に対応して生息範囲を変えている。気候関連の定着化と絶滅についてロバスト予測を行うには、範囲エッジのダイナミクスを理解することが重要である。ほとんどの地球規模の変化の研究が空間または時間の経過とともに観測データの平均をとるため、この研究は、寒冷および温暖の範囲のエッジの年次ダイナミクスを調べる初めての研究となる。米国北東部で行われたトロール調査の数十年にわたる時系列で、海洋魚の年間の範囲エッジのダイナミクスを、個々の種レベルと寒冷エッジと温暖エッジの組み合わせにプールしたものを分析した。

寒冷エッジが温暖エッジよりも気候追跡のための有力な証拠を示すかどうか(気候ではないプロセスまたは温暖エッジでのタイムラグ、生物地理学の仮説または絶滅の負債仮説)、また温度変化を等しく追跡するかどうか(生息地の適合性の影響による:生態生理学の仮説)をテストした。局所的な温度変化との相関関係を調査することに加えて、種または群集固有の海底、海面温度等温線を計算し、それらを使用して範囲のエッジ位置を予測した。寒冷エッジはより遠くに移動し、温暖エッジよりも海面と底部の温度等温線を追跡する結果となった。混合効果モデルにより、等温線位置の緯度が1度シフトすると、寒冷エッジは緯度0.47度、温暖エッジは0.28度だけ移動することが明らかになった。寒冷地のエッジは温暖地のエッジよりも気候変動をよく追跡しており、生態生理学的仮説が無効であることを示唆する結果となった。また、地球温暖化ホットスポット内の移動性の高い海洋外温動物でさえ、気候に完全に対応している種はほとんどいないこともわかった。

Reference

Fredston-Hermann, A., Selden, B., Pinsky, M., Gaines, S.D., & Halpern, B.S. (2020). Cold range edges of marine fishes track climate change better than warm edges. Global Change Biology. doi:10.1111/gcb.15035 link